中東進出の日本企業、現状と課題
株式会社帝国データバンクが発表した最新の調査によると、2024年8月時点で中東地域に進出する日本企業は合計で443社に達しました。進出先として最も多いのはアラブ首長国連邦(UAE)で、その数は289社にのぼります。
進出先国とその傾向
UAEへの多くの進出企業は、主に石油や天然ガス関連の事業を展開しており、ドバイやアブダビなどの都市に拠点を置いています。また、イスラエルにも95社の日本企業が進出しており、特にテルアビブを中心とした先端技術産業での活動が目立ちます。こちらでは、半導体や医薬品の研究開発が行われています。
さらに、サウジアラビアには78社が進出中で、こちらは商社や金融機関を中心に新エネルギーの開発も視野に入れた動きが目立ちます。
イランへの進出の実態
注目されるのはイランへの進出企業で、26社が進出しています。イランでは主に卸売業が60%を占めており、現地の農産物や手工業製品を日本に輸出するための拠点として機能しています。金融機関や商社も進出しており、情報収集を目的とした拠点が設けられています。
企業が抱える懸念
ところが、企業の進出に際しては多くの懸念が存在しています。調査によると、最も多く挙げられた課題は為替レートの変動であり、次いで政治情勢に関する情報収集の難しさが指摘されています。この中で特にイランとイスラエル間の緊張の高まりが企業活動に影響を与えつつあり、外務省も注意喚起を行っています。
最近では、レバノンとイスラエルの間で戦闘が激化し、これに伴って退避勧告が出されるなど、治安情勢の不安定さが懸念されています。中東全域において、危険情報が発出される地域が急増していることから、進出を考える企業は慎重な判断が求められています。
各企業においては国ごとに情勢が異なるため、対応策はさまざまです。治安が比較的安定しているUAEやサウジアラビアに進出している企業は、情報収集の強化に留まる一方、イランやイスラエルでは駐在員の退避や出張の延期といった強硬策が必要になる見込みです。
このように、日本企業が中東地域に進出する中で直面している課題は多岐にわたります。企業は、常に変わる国際情勢や経済の動向に敏感に反応しつつ、柔軟に対応していく必要があります。