新たな味の設計を支援するAI技術、フードペアリングの革命

静岡県立大学のAIが切り拓く新時代の食品開発

静岡県立大学発のベンチャー企業、合同会社DigSenseは、同大学の食品化学研究室と提携し、食品開発の現場に革新をもたらす次世代AIプログラム「F-index Pairing」を発表しました。この技術は、私たちの風味体験を数値化し、人的経験に頼ることなく、食材同士の相性をシンプルかつ迅速に解析します。

従来のフードペアリング理論の限界

食材の風味相性は食の美味しさを計る上での重要な要素です。これまでのフードペアリングは、成分の香気成分が共通しているかどうかを基準にしていましたが、実際には風味が異なる食材でも、共通する風味を持っている場合には高い相性が見込めることがあります。「F-index Pairing」では、このような類似性をAIが解析し、数値化して提供します。

たとえば、唐辛子と生姜の間に存在する「辛味」という共通の風味に着目することで、これまでにはない新たなペアリングも発見される可能性が広がります。この技術の実用化は、食品開発業界に新風を巻き起こし、味の設計を効率化する道を開くことでしょう。

ウイスキーと食材の相性解析

「F-index Pairing」による実験では、市販のウイスキーを600種類の食材と組み合わせて解析を行いました。その結果、モルトウイスキーはチェダーチーズと、バーボンウイスキーはエビと非常に良い相性を示すことが確認されました。この新たな技術を駆使することで、風味の違いを元に斬新な食材の組み合わせを見つけ出すことができるのです。

実用化商品「AlomaEdge-ACE-」の登場

さらにこの技術を活用した実用化商品「マスキング・フレーバーオイルAlomaEdge-ACE-」が、2025年4月14日から販売開始されます。このオイルは、静岡県立大学での20年以上の研究に基づいて开发されたもので、好ましい風味を引き出しつつ、不快な風味を抑えることを目指して作られました。

AlomaEdge-ACE-は、シトラスジンジャーを基にした香りが特徴で、特に大豆ミートとの相性に優れ、味の改善効果が期待されています。環境負荷の軽減にも寄与する新たな選択肢になりうるでしょう。

開発者からのメッセージ

最高技術責任者の辻凌希は、「AIにおいしさがわかるのか？」という疑問について語り、現在は人間の感覚を理解させつつ、AIによるフードペアリング解析が可能になっていることを説明しました。このF-indexの開発によって、風味を言語として扱うことができるようになり、より直感的な味の設計が実現できると期待されています。