91歳で語り継がれる銀座の老舗呉服店「むら田」の物語

銀座の老舗呉服店「むら田」

銀座の静かな街角に佇む老舗呉服店「むら田」。この店は、きもの好きの人々に長年愛されてきました。そして、店の背後には、91年間の人生を歩んだ村田あき子さんの情熱と知恵が詰まっています。彼女は20代で呉服店に入り、60歳で店主としての責務を引き継ぎ、90歳を過ぎても毎日自らきもので店に立ち続けました。文筆家・西端真矢さんによってまとめられた彼女の思い出は、まるで一篇の詩のように心に響きます。

村田あき子の生涯

村田さんは、1932年に東京の田端で生まれました。モザイク工芸作家の父、そして日本画家の祖父のもとで育った環境は、彼女に美意識を育むきっかけとなります。女子美術大学に進学後、彼女は銀座の呉服専門店「染織工芸むら田」に入社し、やがて六代目となる夫、村田悳次さんと結婚します。彼との生活は、彼女が独自のきものの美学を磨く原動力となったことでしょう。

きものへの情熱

「むら田」は、ただの呉服店ではありません。村田あき子さんがこだわり続けたきものの世界には、彼女の人生そのものが映し出されています。彼女は、毎朝の決まりごとを大切にし、各種の素材やデザインに対する深い理解を持っていました。それが彼女の「むら田にしかないきもの」へのアプローチを生んでいたのです。

書籍『九十一歳、銀座きもの語り』

2025年11月12日、村田あき子さんの人生が、西端真矢さんの手によって書籍として出版されます。『九十一歳、銀座きもの語り』では、彼女の成長過程やきものを通しての体験、人生の節々で出会った「変わり者の店主」としての業績が語られています。この本は、きものや日本文化、そして人生のあり方を考えるきっかけになることでしょう。特に、銀座という場所が持つ歴史的背景とともに、村田あき子さんの個性が織り成す物語は、他に類を見ないものです。