赤潮を予測する新たな技術の実証開始
日本の海域で見られる赤潮は、植物プランクトンの異常な増殖により引き起こされ、特にカレニア ミキモトイという毒素を持つ藻が繁殖すると、水産業に深刻な影響を与えます。この状況を改善するために、新たに開発された赤潮予測アプリが伊万里湾で実証されています。
赤潮の現状と影響
特に長崎県では、赤潮の影響を受けた養殖業が深刻な被害に直面しており、2023年には13億円もの損失が報告されています。また、長崎県の知事は国に対策を求める要望書を提出するなど、緊急性が増しています。水産業に携わる業者にとって、赤潮問題の解決は待ったなしの課題です。
UCHIモデルをベースにしたシミュレーション
今回の赤潮予測アプリは、九州大学の山口創一助教によって開発されたシミュレーションモデル「UCHI(Unstructured-mesh Coastal model with High-resolution Information)」が基盤となっています。このモデルでは、複雑な地形や環境条件を高精度で再現し、1週間先の赤潮の発生状況を予測することが可能です。
双日ツナファームの取り組み
双日は2008年に伊万里湾口である鷹島にツナファームを設立し、約4万尾のマグロを育てています。最近の赤潮による数百尾の損失を受け、デジタル技術を用いた被害軽減策を進めています。このアプリは、養殖業関係者に向けて赤潮の移動経路を地図上で可視化するために開発されました。
無償の情報配信がスタート
伊万里湾での実証フィールドでは、2024年7月から地元の漁業や養殖関係者60名が無償でアプリを利用し、赤潮の予測情報を受け取ることができます。これにより、利用者は自分の養殖場や漁場に赤潮が到来するかどうか、その時期を事前に把握し、必要な対策を講じることができるようになります。餌止めや防除剤の散布などの事前対策を通じて、被害の軽減が期待されています。
今後の展開
実証を通じて得られたデータは、今後のアプリの改良に生かされる予定です。カレニア ミキモトイ以外の有害プランクトンへの対応や、利用者からのフィードバックを反映させた新機能の追加も検討されています。九州大学と双日は、この技術を通じて漁業や養殖業の赤潮による被害を軽減するために努力を続けていくとしています。
まとめ
赤潮問題の解決は日本の水産業にとって大きな課題です。新たに開発された赤潮予測アプリは、数字とデータを駆使した未来の水産業を切り開くカギとなるかもしれません。技術革新がもたらす新しい可能性に期待が高まります。