EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)は、立教大学経営学部の田中聡准教授との共同研究を通じて、若手人材の管理職志向を向上させるための要因を明らかにしました。この調査は、日本の20~30代の非管理職層を対象にしたもので、定性調査と定量調査により、管理職への憧れや意欲を引き出すために必要な要素を特定しました。
調査の結果、若手が管理職志向を高めるための主要なドライバーは三つの領域に分けられます。まずは会社の施策です。管理職の仕事内容ややりがいを社員にしっかりと示すことが求められています。また、管理職にふさわしい報酬体系を整え、魅力を高めることや、管理職が孤立せずに支援し合える職場環境を構築することも大切です。これらの施策を通じて、若手社員の不安を軽減し、自信を持たせることが、管理職志向を引き上げる鍵となります。
次に、管理職(若手の上司)の行動です。若手社員が管理職の意義や価値を実感できるよう、上司自身がその重要性について語りかけることが効果的です。また、若手が上位層との接点を持つ機会を与え、視座を高めることが求められます。さらに、管理職がメリハリを持った働き方を実践することで、管理職に対するネガティブなイメージを和らげることができます。
最後に、若手本人の志向が重要です。管理職の仕事の魅力を理解し、業務に興味を抱くことが求められます。自身の会社に対する愛着やロイヤリティを持ち、具体的に目指せる管理職像を描くことが、心理的な障壁を低くします。
調査の背景には、近年若手社員の管理職志向の低下が問題視されています。パーソル総合研究所の小林祐児氏が言うように、現代では管理職は「罰ゲーム」との認識が広まり、それに対する若手の憧れが薄れています。この現状を踏まえ、企業は魅力的な管理職の定義を見直し、未来の管理職としての貢献を強調すべきです。
田中聡准教授は、「管理職は組織の中心的な立場から未来に貢献する重要な役割を担っています。しかし、その意義が十分に伝わっていないことが大きな課題です。この調査を通じて、次代の管理職を目指す若手の志向をどう高めていくか、具体的な施策を模索する必要があります」と述べています。
EYSCの桑原由紀子パートナーは、現在多くの若手が管理職になりたくない理由を探りがちですが、この研究ではあえて「若手が管理職になりたいと考える要因」を明らかにしました。「管理職は魅力を感じられる仕事であるべきであり、そのためには孤独にさせず、報酬のプレミアム感を持たせることが重要だ」と言及しました。
このような調査結果は、企業が抱える管理職なり手不足問題を解決する糸口になる可能性があります。社内での管理職の魅力を再評価し、次代のリーダーを育成するための手立てを講じることが、今後の課題となるでしょう。企業は、現代の若手がどのように管理職志向を抱くようになるのかを真剣に考え、必要な施策を講じることが求められています。
最後に、本調査の結果を基にしたセミナーも予定されています。そこでは、若手人材の管理職志向を高める方法についてさらに具体的な議論がなされる見込みです。この興味深い調査の結果は、企業だけでなく、若者自身が未来のキャリアを考えるうえでも重要な指針となることでしょう。