光スキルミオンの生成と制御
千葉大学の研究チームが、テラヘルツ(THz)波を利用して新たな光の状態「光スキルミオン」の生成とその動的な制御に成功しました。この技術は次世代の情報通信や物性計測に応用されることが期待されています。これまで光スキルミオンの実現は、位相と偏光を精密に制御する必要があり大きな課題とされていました。
研究の背景
近年、光のいろいろな特性を自在に操る「構造化光」の研究が進んでいます。狙われているのが、情報通信分野における新たな手法として注目を集める光スキルミオンです。これは、磁性体中で見られるスキルミオンに似たトポロジカルな構造を持っています。
また、テラヘルツ波は光と電波の間に位置する周波数帯で、高幅広な通信やスピントロニクスなどの発展が期待される分野ですが、光スキルミオンの生成には高精度の制御が求められます。これにより、テラヘルツ波の利用がより困難になっていました。
研究成果のポイント
研究チームは、独自に開発した周波数可変テラヘルツ光源と二光路干渉システムを組み合わせ、通常のガウシアンビームと「光渦」と呼ばれる特異な波面を持つ光を干渉させて異なるタイプの光スキルミオンを生成しました。
生成された光スキルミオンは、光の偏光状態とトポロジーを詳細に解析し、スキルミオン数として定量的に評価された結果、テラヘルツ波領域での安定したスキルミオン構造が確立されました。さらに、光の位相差を変えることで、光スキルミオンの偏光構造が回転する現象も観測され、動的な制御が可能であることが実証されました。
今後の展望
研究に関わった三上修作氏は、「光スキルミオンは、情報の位相、偏光、軌道角運動量などの複数の特性を同時に活用できるため、今後の高容量通信や高感度センサー技術への応用が期待されます」と語ります。テラヘルツ波は物質との強い相互作用を持つため、新たなスピントロニクスや分光技術の創出が見込まれています。
用語解説
- - テラヘルツ(THz)波: 電波と光の中間に位置する帯域で、医療やバイオ計測、無線通信に応用されることが期待されています。
- - トポロジカル: 構造が持つ特徴の一つで、連続的に変形しても変わらない性質を指します。
- - 光スキルミオン: 光の振動方向が渦状に分布し、トポロジカルな構造を形成した特殊な光の状態を示します。
論文情報
この研究成果は、2026年7月28日に学術誌APL Photonicsにその内容が発表されました。研究チームのメンバーには、三上修作氏、伊東莉那氏、宮本克彦教授などが含まれています。
研究プロジェクトについて
本研究は日本学術振興会の助成を受け実施されました。これにより、未来の光通信、センシング技術に向けた重要な一歩が踏み出されました。