縄文時代の籃胎漆器に見られる修理技法の発見と意義
研究の背景と目的
2024年6月、岩手県一戸町の山井遺跡から出土した縄文時代晩期の籃胎漆器がX線CT解析によって詳細な調査を受け、初めて修理の痕跡が発見されました。これは、編組技法の解明に関する重要な成果とされ、縄文時代の人々がかごを修理する技術を持っていたことを証明するものです。本研究は、明治大学黒耀石研究センター、御所野縄文博物館、金沢大学古代文明・文化資源学研究所などの協力の下、進められました。
籃胎漆器の特徴
籃胎漆器は、ササ類を用いて編まれたかごに漆を施したもので、縄文時代後期に東日本全域で広く使われました。この技術は、かごの実用性を高めるだけでなく、装飾的な意義も持っていました。従来の研究では、これらの漆器の外部形状や表現には注目が集まっていましたが、内部構造や修理技術の重要性は見過ごされがちでした。
修理技法の発見
X線CT解析によって、山井遺跡から出た籃胎漆器の内部構造が観察され、特にかごの底部から体部にかけて複数の紐で補修されていることが確認されました。この発見は、漆塗りの外観からは全く見えないため、従来の技術では気づくことのできなかった人々の高度な技術を示唆しています。特に、補修の痕跡は、漆を塗った後に修理が行われたことを示しており、この喫緊の技術は縄文人が日常生活で持続的に道具を活用していたことを証明しています。
研究の進展
本研究の成果は、八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館の『研究紀要』に2025年に掲載予定で、また同年の2月22日には御所野縄文博物館での調査成果発表会にて一般公開されることが決定しています。これにより、縄文時代の文化と技術に関する理解がさらに深まることが期待されます。
まとめ
修理技法の発見は、縄文時代の人々がかごを大切に使い、修理を通じて物を永続的に利用し続ける文化を持っていたことを示しています。この研究は、縄文時代の生活文化や技術を知る上での重要な一歩となるでしょう。往古の智慧を現代に生かすためにも、さらなる研究が必要とされています。