人手不足を逆手に取った美波町のAI導入事例
徳島県に位置する美波町は、その美しい自然や豊かな地域資源で広く知られていますが、人口減少や人手不足といった深刻な課題にも直面しています。町役場はこれらの危機感を抱きつつ、将来的な行政管理についての課題意識を高めていました。
一方で、美波町の役場はこの逆境をチャンスとし、Azure OpenAIを用いて自らのインフラ上で生成AIの基盤を内製しました。この取り組みは、異なる分野で働く職員たちが協力し、エンジニアリング経験がない者でも実現可能な道を示すものでした。開発から得た知識は職員間で積極的に共有され、最終的には庁内勉強会が開かれることで全体のICTリテラシー向上に寄与しました。
AI導入の懸念とその克服
美波町では、AIの導入に関して長らく検討を続けていましたが、セキュリティ面での懸念から踏み出すことができずにいました。特に、行政データの漏洩や外部モデルへのデータ学習の懸念は、自治体にとって深刻な問題です。これを解決するため、町はAzure OpenAIを活用し、データ処理を安全に行える環境を構築しました。Microsoft Entra IDを基盤にすることで、条件付きアクセスやIP制限を導入し、自治体の情報を確実に保護しました。
さらに、株式会社クラウドネイティブの協力により、職員が主体的に取り組める環境が構築され、セキュリティ対策も効果的に強化されました。クラウドネイティブは、進捗に応じた支援を提供し、職員自らが構築・開発できるような伴走型のサポートを行いました。
先進的なAIシステムの構築
美波町の最大の特徴は、導入したAIが複数の性格と役割を持つ「カレンちゃん」というチャットボットです。このチャットボットは、さまざまな業務サポートや政策立案、議会対応などを行い、実際に人間と対話しているような感覚を提供します。Teams上での意見交換は、複数のAIによる広範な議論を可能にし、賛成意見や反対意見、その理由、さらには改善案の提案を迅速に行える機能を備えています。
また、職員が簡単に質問できるよう、プロンプト集を作成し、PDF読み込み・要約機能も追加されています。これにより、利用者は簡単に情報を取得でき、業務の効率化にも貢献しています。
職員の反応と期待
今回のAI導入に関するアンケート結果からは、すべての回答者が業務改善の可能性を感じているとの結果が得られました。これは、AI活用が職員の期待を超えた実行に向かっている証拠です。美波町役場では、この期待に応えるため、継続的な改善を図る方針です。
勉強会による知識共有
美波町ではAI開発を行った職員主導で庁内勉強会が開催され、活用方法やプロンプト設計のノウハウが職員に共有されました。この取り組みは、他の職員のAIに対する理解を深めると同時に、活用に対する姿勢の変化を促しました。意見交換会の中では、プロンプト集を充実させるアイデアも出され、実際の運用に役立てられる見込みです。
将来の展望と地方自治体への示唆
美波町の取り組みは、リソースが限られる地方自治体でも生成AIを活用し、自立した環境を整えることができることを示しています。エンジニア経験のない職員でも実現できるこのモデルは、主に地方行政の効率化や住民サービス向上に向けた足がかりとして期待されています。
株式会社クラウドネイティブは、情報システム分野での専門的な支援を提供しており、自治体が自立した環境を構築しやすいサポートを行っています。今後、美波町がどのような進化を遂げるのか、注目が集まります。