海上技術安全研究所の近内亜紀子上席研究員がIAEA/TRANSSC/TTEG-OM議長に就任
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(以下、当所)の海洋リスク評価系の近内亜紀子上席研究員が、国際原子力機関(IAEA)の輸送安全基準委員会(TRANSSC)の技術専門家グループ(実務課題)(TTEG-OM)議長に就任しました。任期は2024年から2026年までです。
近内上席研究員は、2009年からIAEA/TRANSSCの定例会合に20回以上参加し、日本の意見を反映してきました。2014年からは、TRANSSCでの対応を審議する国内検討会の事務局を務め、我が国の対処方針作成において中心的な役割を果たしてきました。これらの実績が認められ、2021年からは日本副代表として交渉等にあたっています。
TRANSSCは、2017年に放射性物質輸送における分野ごとの課題検討を目的として4つの技術専門家グループ(TTEG)を設立しました。そのうちのTTEG-OMは、放射性物質の船舶や航空機等への積載要件や放射性以外の危険性を有する場合の積載要件の明確化などの課題を取り扱っています。
近内上席研究員は、これまでTTEG-OMにおいて、IAEA輸送規則への約200件の各国提案についての議論を主導し、前議長を補佐し審議結果をまとめるなど、重要な役割を果たしてきました。また、国際海事機関(IMO)から、国際海上危険物規程(IMDGコード)における放射性輸送物等の積載要件に関する輸送指数及び臨界安全指数
に関してTRANSSCに専門的意見を求められた際、TRANSSCからの回答文書作成に貢献しました。
これらの実績により、近内上席研究員は前TTEG-OM議長国である南アフリカ共和国から推薦され、全参加国からの支持を得て、2024年6月10~14日にウィーンのIAEA本部で開催されたTRANSSC48にてTTEG-OM議長に選出されました。
近内上席研究員は、今後もIAEAで行われる放射性物質輸送に関する議論において、各国関係者や輸送に関する国際機関と協調しながら議論を主導し、放射性物質の安全な輸送のために貢献していく予定です。当所は、近内上席研究員の活動を全面的に支援していきます。
輸送指数とは、放射性輸送物等周辺1m距離の線量率に基づく外部被ばくに関する指数。臨界安全指数とは、核分裂性輸送物の臨界の起り易さを表す指数。IAEA輸送規則及びIMDGコードでは、船舶の船倉、区画、指定甲板区域等それぞれへの積載について、この指数に基づく制限値を規定しているが、一部に不整合があり、その解消に向けた議論が継続されている。