ニパウイルスとヘンドラウイルスの新しい診断法への挑戦
医療の現場では、新興感染症への迅速な対応が求められています。PATHとiBodyが提携し、ニパウイルス(NiV)およびヘンドラウイルス(HeV)の早期検出ツールの開発に取り組んでいるというニュースは、まさにその要請に応えるものです。両社は、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)から9990万円の助成を受け、このプロジェクトを進めることになりました。
ニパウイルスとヘンドラウイルスは、ヘニパウイルス(HNV)群に位置づけられ、いずれも感染症の流行を引き起こすリスクが高い病原体です。特に、ニパウイルス感染症は致死率が40~75%にも達し、回復した場合でも20%の人々に長期の後遺症が残ることがあります。ヘンドラウイルス感染は非常に稀であるものの、致死率は50%を超え、いかに怖ろしい病気であるかがわかります。
現在、これらのウイルスに対する診断法、ワクチン、治療法は存在せず、診断のためには通常、中央検査施設での培養法や高コストな分子診断法に依存しています。しかし、これらの手法は時間がかかり、資源が制限された地域では利用が困難です。このため、感染の拡大を防ぐためには、迅速な診断が不可欠です。 早期の隔離や接触者追跡が効果を発揮するため、診断までの遅れは感染拡大を招き、死亡リスクを著しく増加させる要因となります。
迅速な抗原検査の開発
「Strategic High-Performance Immunoglobulins for Epidemic and Lethal Diseases(SHIELD)」というプロジェクトでは、現場で簡便にニパウイルスとヘンドラウイルスの感染を検出できる迅速抗原検査(RAT)の試作品の開発が進められています。この試験検査には、iBodyが有する独自の抗体発見技術「Ecobody技術®」と、PATHの迅速抗原検査開発の技術が組み合わされています。これにより、特異性の高い診断ツールの実現が目指されています。
高機能な抗体の開発に成功すれば、商用品としても利用可能な迅速抗原検査の基盤が築かれることになるでしょう。この取り組みは、特に医療資源が限られた地域において、世界的なパンデミックに備える意義があります。
パートナーシップの重要性
PATHのグローバルプログラムリーダーであるGonzalo Domingo氏は、「診断技術は感染症への対応において不可欠で、正確な症例確認を可能にします。この重要な解決策を地域に届けられることを嬉しく思います」と語っています。また、iBodyの代表取締役CEO、天草陽氏も、「迅速かつ正確な診断の実現を目指し、我々の技術が利用されることを期待しています」とコメントしています。
新たな製品の投入と期待
SHIELDプロジェクトは、現在進行中の抗体開発だけでなく、評価済みの低コストな高品質抗体に関するアクセスを広げることや、RAT製造への迅速な移行を目指した標準業務手続きの整備など、さまざまな施策を通じて、産業界と連携しながら重要な課題の解決を図ろうとしています。これにより、ニパウイルスやヘンドラウイルスの流行から人々を守ることが可能となると期待されています。
新興感染症に対する迅速で効率的な医療技術の導入は、感染拡大の防止と健康上の脅威の軽減に寄与することでしょう。 ぜひ、今後の展開に注目です。
会社紹介
- - PATH: 健康の公平性の実現に向けて活動する国際非営利団体で、40年以上にわたり多くのパートナーと協力し、革新的な医療解決策を開発しています。
- - iBody株式会社: 名古屋大学から生まれたバイオテクノロジー企業で、高機能モノクローナル抗体の探索に特化し、独自技術を駆使して、多岐にわたる医療分野での研究開発を支援しています。