抗菌薬の適正使用
2025-05-02 15:27:28

キノロン系抗菌薬の過剰使用に警鐘!眼科医が語る結膜炎治療の重要性

キノロン系抗菌薬の過剰使用に警鐘!眼科医が語る結膜炎治療の重要性



近年、抗菌薬の適正使用についての意識が高まりつつありますが、特に眼科領域ではキノロン系抗菌薬の過剰使用が深刻な問題となっています。これに関して、関西医科大学附属病院の眼科角膜センター長である佐々木香る先生にお話を伺いました。彼は、この状況の背景や結膜炎の治療における課題について詳しく指摘しています。

国のAMR対策とキノロン系抗菌薬の実態



国は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2023-2027」を通じて、抗菌薬の適正使用を推進しています。この計画に基づき、抗菌薬が本当に必要な疾患に対してのみ適切に使用することが求められています。しかし、日本においてはキノロン系抗菌薬点眼が非常に多く処方されており、特に慢性結膜炎の患者では長期投与が行われる傾向があります。

抗菌薬点眼は、高濃度で投与されるため、適切に使わなければならない薬剤です。佐々木先生は、「点滴や内服薬に比べ、抗菌薬点眼は300から1,500倍の濃度に達する」と注意を呼びかけます。

キノロン系抗菌薬の特性と課題



キノロン系抗菌薬は、利便性や多種の適応菌種により90%以上が処方されていますが、抗菌薬耐性の増加が危惧されています。特に、眼科においてはその使用法が際立つため、より慎重に対応する必要があります。現在、WHOが提唱するAWaRe分類では、「Watch」カテゴリーに位置づけられており、制限された用法が求められています。

特に結膜炎の治療においては、必ずしも細菌性でない場合も考えられます。アレルギーやウイルス性結膜炎が存在し、いずれもキノロン系抗菌薬では対処できないことが多いのです。重ねて、充血や眼脂の症状のみで抗菌薬を投与することは適切でないと佐々木先生は強調します。特に、これまでの治療が効果を示さない場合には他の疾患の可能性も考慮すべきです。

結膜炎の正しい診断と治療法



結膜炎は、前眼部の炎症であり、場合によっては細菌以外の要因が関与していることがあります。ポイントは、眼脂の性状の違いに注目することです。細菌性の結膜炎では、黄色い膿性眼脂が見られる一方、アレルギー性結膜炎の場合は透明でさらさらとした漿液性の眼脂が観察されます。これらを見極め、適切な治療に結びつけることが治療の質を向上させる上で重要です。

また、眼脂の採取や塗抹検査は、感染の有無を確認するためにも役立ちます。これにより、実際に細菌が存在し、抗菌薬が必要かどうかを判断する材料となります。こうした診察や検査は眼科医だけでなく、さまざまな医療従事者にも可能であり、注意深い観察が求められます。

まとめ



抗菌薬の適正使用を促進することは、患者にとっても医療現場にとっても重要です。特に眼科領域においては、結膜炎の治療においてキノロン系抗菌薬の使用を見直すことが急務です。充血や眼脂の症状だけで判断せず、詳細な診断と適切な治療を行うことが、結局はさらなる耐性菌の発生を防ぐ鍵となります。さまざまな医療従事者が一丸となり、抗菌薬の適正使用を促進していくことが求められます。


画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

会社情報

会社名
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター AMR臨床リファレンスセンター
住所
東京都新宿区戸山1-21-1
電話番号

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。