新しいバイオ炭コンクリートの開発
日本GX総合研究所は、広島大学発スタートアップの合同会社ゲルバイオと手を組み、「バイオ炭コンクリート」の共同研究開発を始めました。この新しい建設材料は、二酸化炭素を固定化できる特性を持っており、環境への負荷が高い建設業界における脱炭素の実現に向けた重要な一歩です。
バイオ炭コンクリートの意義
地球温暖化や気候変動は世界中で深刻な問題となっており、その対応として、建設業界におけるCO₂排出量の削減が求められています。特にセメントの製造過程は大きなCO₂排出源となっているため、その代替材料として「バイオ炭」の利用が注目されています。バイオ炭コンクリートは、単なる二酸化炭素の削減にとどまらず、しっかりと固定化できることで、カーボンネガティブな社会基盤を形成することが期待されています。
この共同研究においては、以下の目的に焦点をあてています。
1.
バイオ炭を用いたコンクリートの強度評価
バイオ炭の特性を活かしたコンクリートの構造や耐久性についての検討を行います。
2.
炭素固定効果の検証
バイオ炭コンクリートがどれだけ二酸化炭素を固定できるのか、ライフサイクルアセスメント(LCA)を通じて詳細に分析します。
3.
実際の建築物への適用テスト
透水性舗装や漁礁など、バイオ炭コンクリートを実際にどのように運用できるのか、スケールアップを進めていきます。
未来に向けた展望
日本GX総研とゲルバイオは、この共同開発を足がかりに、バイオ炭の調達から建材化、さらに施工現場への導入を一貫して進める「GXサプライチェーン」の構築を目指しています。2025年度内には、PoC(Proof of Concept)に向けた強度試験と評価を行い、ビジネス化に向けた具体的な技術確立を進める予定です。
今後の方向性としては、以下の内容が提案されています。
1. 植物由来の炭素を建材に固定するための
pCCUSモデルの実現、これにより国際競争力のある商品を目指します。
2. 地方自治体や建設会社への販売支援を強化し、カーボンネガティブ建材の普及を目指します。
3. 国内外で生産されている高機能バイオ炭の採用や評価を行い、安定供給可能なコンクリート製品を開発します。
4. 国際的な建設基準に対応するため、海外市場への展開を視野に入れたパイロット施工を進行します。
このプロジェクトは、単なる新材料の開発にとどまらず、「CO₂を資源として利用する」新しい社会の実現に向けた大きなステップとなります。GXの推進を通じて、持続可能な経済モデルを築くことを目指し、地域発のソリューションを全国や世界に展開していく考えです。
参画者の意見
小原政信氏(合同会社ゲルバイオ CEO)
「バイオ炭を利用することで、『炭素を貯める構造物』の開発が現実味を帯びています。この新技術は、単にCO₂を削減するだけでなく、カーボンネガティブな基盤を築くことに寄与するでしょう。」
細目圭佑氏(宮崎大学 特別准教授)
「pCCUSの考え方は、自然を活用した脱炭素の取り組みとして非常に効果的です。今回のプロジェクトは、大学や研究者と企業が一体となって、新たなモデルを形成するものです。」
鳥井要佑氏(日本GX総合研究所 代表取締役)
「GXの未来には、単なる排出削減だけでなく、CO₂の活用法が求められています。バイオ炭コンクリートはその象徴的存在です。このプロジェクトを通じて、GXの進化に寄与していく所存です。」