「静かな退職」が職場に与える影響とその実態
最近、働き方のトレンドとして「静かな退職」が注目を集めています。これは、仕事に全力を尽くすことなく、必要最低限の業務をこなす働き方を指します。イメージとしては、退職や転職の意図はないものの、仕事に積極的に関わらず、時間だけを過ごすような状態を示しています。2024年、Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)が実施した調査によれば、この「静かな退職」に関する認知度や実態についての新たな分析が行われました。
静かな退職とは何か?
「静かな退職」という概念は、アメリカのキャリアコーチ、ブライアン・クリーリーによって2022年に広められました。この言葉は徐々に日本でも知られるようになり、特に若い世代の働き方に影響を与えています。そして、今回の調査では、従業員の約71%が入社後にこの働き方を選ぶようになったことが明らかになりました。これは企業にとって大きな問題です。多くの人が会社に期待を抱いて入社するものの、実際には何らかの理由で「静かな退職」を選択しているのです。
調査結果の概観
この調査は20〜59歳の13,824名を対象に実施されました。調査結果からは、さまざまな興味深い点が浮かび上がりました。まず、「静かな退職」を経験していると答えた人は前回調査よりも微増しており、特に25歳から29歳と35歳以上の年齢層でその割合が増加しています。静かな退職の認知度は約3割で、経営層は一般従業員や管理職に比べてその認知度が低いこともわかりました。
管理職の公平なマネジメント
興味深いことに、部下を持つ管理職の77%が、静かな退職をしている部下でもそうでない部下でも公平に接しようとしているとのこと。また、静かな退職を実践している人の3割は、自身の職場での影響を感じていないと回答していますが、実際には上司層はその影響を強く感じていることが分かりました。つまり、自分が静かな退職をしていることが、周囲に与える影響を認識していない可能性があるのです。
収入・スキル面の不安
静かな退職を実践している人々は、収入やスキルの向上に関する不安を抱えている一方で、職場での孤立にはほとんど関心を持たないことが明らかになりました。実際、孤立についての不安はわずか5.4%にとどまっており、職場環境に対する影響をあまり考慮していないようです。
職場の連帯感への影響
さらに、調査は静かな退職が職場に与える影響を明らかにするための重要なデータを提供しました。静かな退職を実践する人が増えれば、連帯感が低下し、職場のモチベーションが影響を受けることが指摘されています。GPTW Japanの代表、荒川陽子氏は、静かな退職が企業の働きがいに影響している可能性を警告しています。彼女は、静かな退職を放置すると、職場のエンゲージメントが低下する恐れがあると強調しています。
企業の対応が求められる時代
静かな退職の実態は企業にとって無視できない問題です。働きかけを通じて、従業員に対するモチベーションを高めることで、静かな退職を減少させることが求められています。また、企業は静かな退職をただの若手の価値観の多様化として認識するのではなく、真剣にその後の対策を検討し、実施する必要があります。例えば、管理職が一人ひとりの従業員の意識改革を進め、プライベートとの両立が可能なキャリアパスを設計することが重要です。
まとめ
「静かな退職」がもたらす職場への影響は計り知れません。労働環境や文化、そしてマネジメントのスタイルが変わることで、今後の傾向が変わる可能性があるからです。企業はこの問題に対して敏感になり、従業員が働きやすさを実感し、自らの仕事に意義を見出すことができるような環境作りが急務です。従業員の信頼を築くためには、経営者自身が動くことが不可欠です。