日本銀行が考えるデジタル時代の決済システムとは

最近のデジタル社会の進展に伴い、日本の決済システムは大きな変革の兆しを見せています。日本銀行の理事である神山氏は、令和5年6月4日に開催された中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する連絡協議会で、このテーマについての考えを述べました。

神山理事は、デジタル社会における決済システムの設計にあたり、まずはCBDCの開発と実証実験のプロセスについて振り返りました。2023年春に開始されたこの取り組みでは、実験用システムを構築し、その性能を試験するとともに、民間企業の知見を活用したCBDCフォーラムを設置し、より広範な議論を行ってきました。これにより、技術的な実現可能性の検証や、社会実装に向けた具体的な設計についての考察が進んでいます。

氏は、この数年の進展を評価しつつも、政府の制度設計や海外の動向といった外的要因にも目を向ける必要性を述べました。世の中の流れに対抗するため、特に米国や欧州の姿勢が影響を与えているとのことです。米国は最近、CBDCの発行にブレーキをかける動きを見せており、ステーブルコインの利用を促進する方針を示しています。これに対し、欧州中央銀行はデジタルユーロの実証実験を進めるなど、競争が激化しています。

さらに、神山理事は世界的に134の国がCBDC導入を検討していることを引き合いに出し、各国が決済手段の普及に対して敏感に反応している現状を強調しました。日本においては、現金流通の減少に伴う問題も取り上げられ、これに対処するために、現金決済の拒否が合法化されるといった事例も見られます。

その上で、日本はまだ銀行券の流通が高い水準にあると評価されるものの、将来的にはキャッシュレス社会へ向けてのシフトが不可避であるとし、リテール決済システムのあり方を日々の業務に反映していく必要性を訴えました。ここで言及されたユニバーサルアクセスや安全性も、デジタル決済の根幹にかかわる問題です。

結論として、神山理事は「現時点でCBDCを発行する計画はない」と明言しつつも、この分野における技術革新が進むなかで、今後もデジタル社会に適した決済システムの枠組みを構築し続ける必要があるとの姿勢を貫きました。また、決済の主要な担い手との密接な対話が不可欠であることも強調し、今後ますます進化する情報社会に向けた取り組みを継続する意向を表明しました。

このように、デジタル時代における決済システムの構築がどのように進展しているのか、そして日本銀行がどのような役割を果たすのか、その動向に引き続き注目していきたいところです。

トピックス(地域情報)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。