ヤングケアラーが生んだ新たな支援の形
若者たちが家族を介護すること、「ヤングケアラー」という言葉が広まる中、実際にその経験を体感した後藤舞さん(33歳)のストーリーが注目を集めています。特に後藤さんは、介護美容という新しい分野で地域社会の高齢者に貢献しようとしています。
ヤングケアラーの実態
厚生労働省の調査によると、高校生の約4.1%が「家族を世話している」と答えたとのことです。これは、約24人に1人という割合です。高齢化や核家族化が進む中で、この数は今後さらに増えると予測されています。そんな中、後藤さんは17歳の頃から、肺がんを患う父の看護や祖父の介護を担い続けてきました。
高校時代、後藤さんは多忙な母の代わりに父の世話をし、勉強との両立に追われる日々を送っていました。「授業中、涙が出てしまうこともありました」と後藤さんは当時を振り返ります。「誰にも話せず、介護の重荷を一人で背負っていた気持ちは今でも忘れません」。
介護美容との出会い
そんな後藤さんの生活は、2018年に転機を迎えました。SNSを通じて「介護美容研究所」と出会い、ここで学ぶことで、自らの経験を生かしたいと考えるようになったのです。
「祖母にメイクやネイルを施していた際、彼女の表情が一変しました。花が咲くように笑顔が増えたのを見て、美容の力を実感しました」と語ります。この体験を経て、彼女は介護の定義が変わったと感じたと言います。「介護は単なるお世話ではなく、自立を支援するプロセスです。そして美容は、その人の尊厳を守る手段にもなり得る」と。
介護美容研究所での学び
後藤さんは介護職員初任者研修を受け、「介護美容研究所 東京校」に入学しました。ここでは、実践的な技術を習得するだけでなく、介護と美容の相乗効果についても学ぶことができます。現在、彼女は千葉県のデイサービスや老人ホームで「ケアビューティスト」として、ネイルやエステを提供しています。
未来への展望
後藤さんは将来、特に在宅の高齢者に美容サービスを届けることを目指しています。彼女は「外出できない高齢者こそ、美容の力によって笑顔が増える」と訴えます。例えば、祖父は在宅での生活が中心でしたが、スキンケアやリップクリームを使うだけで表情が明るくなることを実感しました。
「必要な方に美容や整容のサービスを届けることで、彼らの生活の質を向上させたい」と語る後藤さん。まずは千葉県を拠点に活動を広げ、個人事業主として独立する计划をしています。
ヤングケアラーへのメッセージ
そして、同じ境遇にいるヤングケアラーの若者に向けて伝えたいことがあります。「私たちは頼ることを恥じる必要はありません。周囲や公共サービスを利用して、支援を受けることが重要です」と強調する後藤さん。介護は辛いことだけでなく、家族の笑顔やその瞬間の幸せももたらすことがあります。彼女自身の経験を生かし、今後も新しい道を切り開いていくことでしょう。
介護美容研究所は、これからも後藤さんのような人材を育て、地域の高齢者を支える支援の輪を広げていくことでしょう。私たちもその活動に注目し、応援していきたいと思います。