AIデータ社と国立情報学研究所が挑む偽動画検出
私たちの目が信じられない時代、社会はAIによる偽動画の脅威にさらされています。2023年、AIデータ株式会社は国立情報学研究所(NII)と共同で、偽動画を検出するための新たなAI技術「SYNTHETIQ VISION」の実証実験を開始しました。この取り組みは、SNSや動画プラットフォーム上で横行する偽情報やなりすましを未然に防ぐ狙いがあります。
1. 視覚信頼の限界
近年、生成AI技術が進展し、リアルな映像が簡単に作成できるようになったことから、「本物」と「偽物」の区別が難しくなっています。特に偽動画の増加は、社会的な問題を引き起こし、詐欺や誹謗中傷事件を引き起こす要因となっています。これにより、目視のみでは真偽を判別できない状況が生まれ、より精密なチェック体制が求められています。
2. SYNTHETIQ VISIONの特徴
この技術は、映像内の微細な合成痕跡を解析し、その真偽を評価するために設計されています。具体的には、圧縮や加工後の映像でも検出性能を維持し、判定結果をスコア化することで再検証や監査を可能にします。これにより、即時応答が求められる場面での初動対応をサポートします。AIデータ社は、この技術を活用して偽動画の検出性能を実証し、既存の目視チェックや不正検知システムとの組み合わせを模索しています。
3. 社会実装を見据えた活用例
AIデータ社はこの技術の活用シナリオを次のように考えています:
- - 捜査機関:児童を利用したフェイクポルノや誹謗中傷動画の発見と通報を支援。
- - eKYC/金融業界:AI生成映像を利用した口座開設などの不正行為リスク評価。
- - SNS:ユーザーからの投稿映像のスクリーニングやブランド保護のためのリソース確保。
- - 教育・自治体:いじめ防止やフェイク教材の早期発見ツールとしての活用。
これらはあくまで初步的な想定であり、実証結果に基づいて具体的な導入形態を検討する予定です。
4. 提供方式の検討
技術の社会実装に向けて、AIデータ社は以下の提供方式を候補として具体化を進めています:
- - SaaS型:ウェブでの映像アップロードと評価結果確認。
- - API型:既存システムとの連携による自動判定。
- - OEM提供:他社ブランドに組み込む形での技術提供。
- - セキュア版:閉域網での運用モデル。
5. 今後の展開
AIデータ社は、SYNTHETIQ VISIONを単体の技術にとどまらず、AI時代における映像の信頼性を支える社会インフラの一部と位置づけています。今後は実践的な検証を行い、官民の関係機関との連携をもとに、運用モデルやルール形成に積極的に貢献していく計画です。また、デジタルフォレンジック事業との統合を図り、調査と証拠保全の一環としても取り組んでいく方針です。