上司のフィードバックと新卒者の職場適応
新規学卒者が職場に適応する過程で、上司からのフィードバックがどのような影響を与えるのかについて、株式会社リーディングマークの「組織心理研究所」と株式会社アトラエのWevox/R&Dチームが進めた共同研究が注目を集めています。この研究では、2025年4月に入社した59名の新卒者を対象に、入社直後から研修、店舗配属後にかけてフィードバックの影響を評価しました。
研究の背景
新卒者は仕事に就く際、研修や配属を通じて求められる能力と自己の能力との間に隔たりを感じることがしばしばあります。この隔たり、いわゆる「D-A fit(デマンドとアビリティの適合)」を感じることができると、仕事へのワーク・エンゲイジメントも向上します。そのため、上司からのフィードバックがこのD-A fitに与える影響を理解することは、職場適応を高めるうえで重要です。
本研究では、ポジティブおよびネガティブなフィードバックがD-A fitに与える影響を入社後の異なるタイミングで比較しました。
主な結果
1. D-A fitの時間経過による変化
研究結果によると、新卒者のD-A fitは時間が経つにつれて低下し、個人差が広がる傾向が見られました。具体的には、初めは同じ研修や店舗配属を受けた新卒者でも、仕事に対する自己の能力適合感には大きな違いが生じました。
2. 研修期間中のポジティブ・フィードバック
研修期間中には、ポジティブなフィードバックがD-A fitに良い影響を与えていたことが確認されました。しかし、当該期間におけるD-A fitの変化とワーク・エンゲイジメントとの間には、明確な関連性は見出せませんでした。
3. 店舗配属後のネガティブ・フィードバック
店舗に配属された後は、ネガティブ・フィードバックがD-A fitに影響を与え、その結果としてワーク・エンゲイジメントが向上するという関係が見られました。この発見は、フィードバックを用いた職場適応の向上において、ネガティブ・フィードバックの重要性を示唆しています。
新卒者へのフィードバックの意義
ネガティブ・フィードバックは一見、受け入れがたいものですが、正しく活用すれば新卒者の職場適応を助ける鍵になります。重要なのはフィードバックの与え方であり、具体的な行動に焦点を当て、改善方法や成長のビジョンを共有することが求められます。上司と新卒者の良好な関係を築くことで、フィードバックは受け入れやすくなり、意欲の向上につながるでしょう。
この研究は特定企業の営業職に特化した観察研究であり、全ての企業や職種に適用できるわけではありませんが、職場でのフィードバックの重要性を再認識させるものとなりました。今後は、効果的なフィードバックがどのように新卒者のパフォーマンスを向上させるのか、更なる研究が期待されています。
発表に関する情報
本研究の詳細は、2026年9月5日、産業・組織心理学会第41回大会にて発表される予定です。発表者は、株式会社アトラエの眞鍋一水氏およびリーディングマークの山田圭介、佐藤真美華、佐藤映氏が務めます。この発表が新卒者にとってより良い職場環境の形成に寄与することを期待しています。