2026年8月20日、和歌山市と株式会社Jinが障害認定業務にAIを導入する連携協定を締結しました。この取り組みのメインツールとして活用されるのが、株式会社Jinが開発した障害福祉AI「AURA」です。「AURA」は、障害福祉サービス利用に必要な「障害支援区分」の認定調査から認定審査会資料作成までを支援することを目的としています。
和歌山市では、年間約1200件の認定調査が行われており、通常はそれに約3時間30分かかっていました。しかし、AIの導入により、作業時間を約1時間50分に短縮できる見込みです。これは、1件あたり約100分、年間の積算時間で約2000時間の削減に相当します。これにより、職員は事務の負担から解放され、申請者との対話や専門的な判断により多くの時間を費やすことができるようになります。
今回は、単なる業務の短時間化を目指すだけではなく、より質の高い行政サービスを提供することが重要視されています。AIは認定判断の部分には介入せず、最終的な判断は従来通り職員と審査会によって行われるため、専門能力を必要とする判断の部分はしっかりと人の手で担われます。このようにAIが補完する形で業務効率化を図ることが一つの狙いです。
少子高齢化や人口減少が進む中、多くの自治体が人員不足と対応の難しさに直面しています。2026年には地方自治体における団塊世代の退職が本格化するため、福祉分野を含む住民サービスの質をどのように維持していくかは大きな課題となっています。行政サービスの効率化と質の向上が両立できる新たな仕組みとして、この取り組みが注目されています。
「AURA」は、認定調査の際の会話を要約し、国が定める約80の評価項目に整理する機能や、調査の内容から聞き取り不足を可視化し、必要な情報を職員が把握しやすくする機能を備えています。また、認定審査会資料の作成やマスキング作業をサポートすることで、業務の正確性向上も図っています。
このように、AURAが業務の一部を担うことで、職員が本来担うべき専門的な業務に集中できる環境作りを目指しています。今後、2026年度中に実証作業を行い、その結果を基にさらなる改善が進められる予定です。この実証は、和歌山市だけでなく、全国の自治体にとってもモデルケースとなることを期待されています。
合意文書に署名した和歌山市の尾花市長は、この協定が職員の業務負担軽減と行政サービス向上につながることを強調しました。一方、株式会社Jinの前川CEOは、このAI導入がもたらす変革の重要性について述べ、より良い住民サービスを提供するためには、テクノロジーを有効に活用して限られたリソースを最大限に活かすことが重要であると語りました。
今後、この取り組みの成果が他の自治体でも利用されることで、日本全国に広がると期待されています。この新しい技術とアプローチが、健全で持続可能な行政のあり方を体現する道筋となることでしょう。AI技術がもたらす革新は、福祉分野だけでなく、多くの業務に新しい風を吹き込む可能性を秘めているのです。