吉野家ホールディングスの食品ロス削減への挑戦
近年、持続可能な社会の実現が求められる中、食品ロス削減に対する取り組みが急務となっています。そんな中、吉野家ホールディングスが注目を集めています。2024年度、同社の牛丼に欠かせない玉ねぎの規格外端材を有効活用する取り組みが評価され、環境省及び消費者庁から「令和6年度食品ロス削減推進表彰」において最優秀の環境事務次官賞を受賞したのです。
端材のアップサイクルと持続可能なスキーム
吉野家は、1899年の創業以来、無駄をなくす意識を強く持ち続けてきました。店舗における食べ残しや厨房での廃棄物は、リサイクルや飼料化を行い、より良い形で社会に還元されています。2017年には牛脂の完全リサイクルを確立し、店舗の食品リサイクル率を77.4%まで向上させています。
しかし、工場での玉ねぎの規格外端材問題は深刻で、一日約10トンの玉ねぎを加工する中で約500キログラムの端材が発生し、これまでは有償廃棄せざるを得ない状況でした。この状況を変えるため、吉野家はスタートアップ企業のASTRA FOOD PLAN株式会社とオープンイノベーションによる協業を始めました。
冷蔵発送から粉末化の全工程を自社工場で
2023年2月から、規格外の玉ねぎ端材をAFP社に冷蔵発送し、独自の過熱蒸煎乾燥法を用いてアップサイクルを実施しました。この方法が成功を収めたことで、2024年以降は自社工場に過熱蒸煎乾燥機を導入します。これにより、玉ねぎ端材の回収から粉末化までの全過程を一貫して行うことができるようになり、廃棄物を大幅に削減することが見込まれています。
この連携によって、消費者に新たな価値を提供する「玉ねぎぐるりこ」といった商品も展開され、販路の拡大にもつながっています。さらに、省エネルギー化やコスト削減も実現し、業務の効率化が図られました。
社会的責任の追求と持続可能な取り組み
吉野家ホールディングスは、自社が持つ社会的責任を強く意識しており、健康的で豊かな食事を提供することを重要視しています。栄養塾の専門家を招聘し、機能性表示食品や特定保健用食品の研究開発も進めています。このような取り組みを通じて、地域社会との関わりを大切にしつつ、SDGsの観点からも努力を続けています。
今後の展望と更なる挑戦
吉野家では、食品ロス削減だけに留まらず、各種素材の有効活用を目指しており、玉ねぎの皮やその他の野菜端材を用いた新たな商品開発にも取り組んでいます。その結果として廃棄物を減らし、持続可能な社会の実現に貢献する姿勢が、さらなる企業価値を高めていくと考えられます。
吉野家ホールディングスの活動は、食品業界の中で注目され、他社の模範となっていくことでしょう。環境意識を持ちながら、経済的な視点も犠牲にせず、持続可能な未来へ向かって進むこの取り組みは、私たちの日常にも良い影響を与えてくれるはずです。