デジタル技術で進化する流域水管理
株式会社日本総合研究所が最近発表したレポートは、気候二極化時代における流域の総合的な水管理についての提言を含んでいます。この報告書は、近年の異常気象がもたらす影響を踏まえ、デジタル技術を利用して流域インフラを連携させることで、防災機能と流域全体の価値を向上させる方法を提案しています。
気候変動の影響
日本では、気候変動が降水状況に著しい変化をもたらしています。具体的には、2014年から2023年の間に、1時間あたりの雨が50mm以上降る平均日数が1976年から1985年の1.5倍に増加しました。さらに、2013年以降の水害による合計被害額は約7.2兆円に達しています。この背景には、干ばつや渇水といった極端な現象の増加もあります。これらの問題は、すでに日本で発生している「気候二極化」を象徴しています。
ダムや堤防などの水管理インフラは、こうした状況において非常に重要ですが、全国的に老朽化が進んでいます。そのため、局所的な整備だけでは対応が難しくなっています。にもかかわらず、インフラの整備や維持に使える財源は不足しており、人材も慢性的に不足しています。
総合的な流域管理への転換
こうした状況の中で、日本総研は流域をひとつの単位と捉え、上下流の水循環系を総合的に管理することを提案しています。具体的には、2022年度に設立した「流域DX研究会」が、民間企業や自治体、研究機関とともに、デジタル技術を活用して激甚化する水害に対策を講じてきました。このレポートは、その活動の一環であり、流域の課題、ステークホルダー協調の重要性、流域政策の最新状況、デジタル技術を活用した取り組みなどを整理しています。
レポートの主な内容
本レポートによると、水管理のアプローチは「利水者・治水者の個別最適化」から「流域全体の最適化」へと変化すべきです。その中で、利水と治水の双方を強化し、気候変動に対する適応力と緩和力を両立させることを目指します。具体的な施策としては、複数のダム連携による水力発電の向上や、予測技術を駆使した柔軟な水運用の確立、その成果として新たな投資を引き込み民間企業との優れた連携による人材確保などが挙げられます。
さらに、流域の水運用状況を可視化し、各地点における取水量や河川流量の適切な維持を可能にする仕組みについても詳細が記されています。これにより、流域全体での高度かつ柔軟な水運用が実現されることが期待されます。
日本総合研究所の理念
日本総合研究所は、生活者、民間企業、行政など多様なステークホルダーとの対話を重視し、社会的価値の創造を目指しています。「次世代起点でありたい未来をつくる。」というパーパスを掲げ、様々な分野での研究や提言を行っているため、今後の流域水管理における進展にも大きな期待が寄せられます。
このレポートは以下のリンクからご覧いただけます:
気候二極化時代における流域の総合的水管理に関するレポート