生成AIによる探究教育モデルの実証
文部科学省が推進する先端技術を使った教育プログラムが、宝仙学園順天堂大学系属理数インター中学校・高等学校で始動しました。Institution for a Global Society(IGS)が開発したこの試みは、生成AIを駆使して生徒一人ひとりの能力を最大限に引き出そうとするものです。
先端技術を教育に活かす背景
IGSは 生徒の非認知能力や数理科学的なスキルを測定するためのツール「Ai GROW」や「数理探究アセスメント」を活用し、教育現場のさまざまな課題を解決すべく、新たな探究指導モデルを打ち出しています。この取り組みは、次のような目的を持っています。
1.
クラス全体に最適化された授業設計
アセスメントを通じてクラスが抱える強みや課題を可視化し、それに基づいて生成AIが最適な指導案を作成します。このアプローチにより全員が参加できる質の高い探究活動が実現します。
2.
個別対応の向上
生徒が提出したレポートに基づき、生成AIが個々の生徒に合わせたフィードバックを提供。これにより、各自が直面する課題に対する具体的なアドバイスが得られます。
3.
教師の負担軽減
授業設計やフィードバックの自動化を進め、教師が生徒と関わる時間を増やし、業務負担を軽減します。
4.
データの安全な活用
収集したデータを匿名化することで、個人情報を保護しながら教育の質を向上させることを狙っています。
宝仙学園での実証授業
実証授業は2024年の10月から11月にかけて行われ、特に中学1年生の7クラスが対象でした。生成AIによる授業設計が効果を上げており、生徒の意欲向上や教員の準備時間の短縮が確認されています。
教員の声
探究主任の米澤貴史先生は、「生成AIから得られるデータは非常に価値があり、従来の感覚に新たな視点を加えてくれます。資料作成の時間が短縮され、授業中も生徒の反応を確認しやすくなりました」と述べています。これは教師にとっても生徒にとっても、質の高い授業づくりの一助となっています。
今後の展望
IGSはこの実証事業を宝仙学園だけにとどまらず、さまざまな教育現場に展開していく方針です。市立函館高等学校での個人の探究レポートに関する分析も進行中です。教育とテクノロジーを融合させることで、次世代の探究型学習をより豊かにし、教師の業務負担を軽減する活動に力を入れていきます。
生成AIという新たな可能性
教育現場における生成AIの活用は、これまでの教育方法に新しい可能性をもたらしています。IGSと宝仙学園の取り組みが、今後の教育の在り方に影響を与えることは間違いありません。生徒の成長を促進する新たな教育モデルの開発に期待が寄せられています。