廃プラ選別の新技術
2022-04-05 10:01:48
テラヘルツ波で廃プラスチック選別が進化する新技術の開発
テラヘルツ波の活用がもたらす廃プラスチック選別の未来
近年、海洋汚染やプラスチック廃棄物問題が世界的に注目されており、我々の生活にも大きな影響を与えています。特に、持続可能な開発目標(SDGs)や循環経済の観点から、プラスチックの効率的な再資源化が求められています。このような中、静岡大学や芝浦工業大学、東北大学の共同研究チームが開発した「テラヘルツ波を利用した廃プラスチック識別装置」によって、今後のリサイクル技術が飛躍的に進化する可能性が見えてきました。
テラヘルツ波とは
テラヘルツ波は、約0.1〜10 THzという周波数の範囲を持つ電磁波で、電波と光の中間的な特性を持っています。この波は、非極性物質であるプラスチックに対して高い透過性を示し、しかも人体に無害という特長があります。特に、テラヘルツ波を用いた分光法によって、プラスチック素材やその添加剤の識別が可能になります。
新しい技術の意義
従来の識別装置では、「難燃剤が含まれている黒色プラ」や「添加剤が混合されたプラ」の識別が困難でした。しかし、この新技術により、複雑なプラスチックの群れからでも高い精度で識別ができるようになりました。加えて、テラヘルツ波は紫外線や長期使用による劣化の程度をも把握できるため、再資源化された素材の品質を高めることが期待されています。
この識別技術は、2022年4月1日から施行される新たなプラスチック資源循環法にも対応可能で、本格的な廃プラスチックのリサイクルに向けた期待が高まっています。
実験とデータ蓄積
研究過程において、実際に廃プラ(1,416サンプル)を用いて組成分析が行われました。この結果、従来の近赤外分光測定では困難だった黒色プラスチックや透明プラスチックの識別が可能になりました。さらに、機械学習を導入した識別アルゴリズムにより、識別精度も向上しています。サンプルサイズが増えるごとに精度が上がるため、データベースの構築は今後も継続的に進められる予定です。
廃プラスチックリサイクルの加速
テラヘルツ波による識別技術の導入によって、廃プラスチックの選別精度が向上すれば、より高品質な再生資源の創出が期待されます。テラヘルツ波は直進性も持ち合わせているため、着色プラスチックの陰に隠れた金属部品なども検出可能となり、リサイクル現場での安全性向上にも寄与できるでしょう。このように、テラヘルツ波によって特性を活かした新技術が廃プラスチックの選別に革命をもたらし、リサイクル業界の課題解決に大きく貢献することが期待されます。
研究の助成と今後の展望
この研究は、JST大学発新産業創出プログラムや地域イノベーション・エコシステム形成支援プログラムの助成を受け進行しています。新たな技術により、プラスチック製容器包装の識別がさらに進化し、持続可能な社会の実現に向けた重要な第一歩となることでしょう。今後の進展に、目が離せません。
会社情報
- 会社名
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国立大学法人 静岡大学
- 住所
- 静岡県静岡市駿河区大谷836
- 電話番号
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054-237-1111