TICAD9と人間の安全保障
2025-08-22 12:53:25

TICAD9が捉えるアフリカの未来と人間の安全保障の重要性

TICAD9が捉えるアフリカの未来と人間の安全保障の重要性



2025年8月20日、横浜ベイホテル東急にて開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベントでは、アフリカにおける人間の安全保障と経済開発に関する重要な議論が行われました。「人間の安全保障」という視点から、アフリカが抱える複雑な課題にどのように対処していくのか、そして2030年以降の未来への展望が模索されました。

人間の安全保障の理解とその重要性



人間の安全保障とは、1994年に国連開発計画(UNDP)が提唱した概念であり、国や地域ではなく、一人ひとりの尊厳を守ることを目的としています。この概念は、恐怖や貧困の自由を重視し、従来の国家中心の安全保障を超えた枠組みとして、個々の人間が安全で豊かな生活を送るための支援を重視しています。近年では、気候変動やパンデミックといった新たな脅威に対しても適応する形で発展してきました。

TICADは創設以来、人間中心の開発を重視し、平和と安定の実現に向けた努力を続けてきました。今回のTICAD9では、この人間の安全保障をアフリカの発展の柱として位置づけ、地域戦略と国際戦略との整合性を図ると共に、政府、国際機関、民間セクター、市民社会との連携強化が必要であると強調されています。

開会の挨拶と基調講演



イベントの冒頭では、岩屋毅外務大臣が「人間の安全保障に向けた日本とアフリカの連携の重要性」を強調しました。次いで、人間の安全保障に関する国連事務総長特別顧問の高須幸雄大使が基調講演を行い、気候変動、食糧危機、紛争、開発援助の減少といったアフリカが直面する現実の課題について説明しました。彼は、「このような時代だからこそ、国家を超えて人々の命や尊厳を守るための人間の安全保障が求められている」と強調しました。

パネルディスカッションでの議論



次に、パネルディスカッションが行われ、NHKワールドJAPANの高雄美紀キャスターが進行役を務めました。登壇者には、JICAの田中明彦理事長や、ザンビアのムタレ・ナルマンゴ副大統領、シエラレオネのデビッド・モイニナ・センゲ主席大臣、UNDPアフリカ局のアフナ・エザコンワ局長、政府間開発機構(IGAD)のワークネ・ゲベイェフ・ネゲヴォ事務局長が参加しました。

この中で、エザコンワ局長は、あらゆる意思決定に人を中心に置くことの重要性と包括的なアプローチの意義を強調しました。田中理事長は、JICAが人間の安全保障に関する複層的な脅威に対して、予防と対応の強化を図る方針を紹介しました。ムタレ副大統領とデビッド主席大臣からは、アフリカ各国の現状や対応策についても共有されました。

具体的な課題に対する対策



パネルでは、アフリカにおける人間の安全保障の脅威についても言及があり、南スーダンやソマリアといった地域での紛争の影響が具体的に説明されました。田中理事長は、紛争が繰り返される構造の改善に向けたインフラ整備の必要性を指摘しました。また、感染症に関しては、シエラレオネがエボラ出血熱からの教訓を活かして新型コロナウイルス感染症への対応を行った事例が紹介されました。

気候変動問題に目を向けると、ムタレ副大統領は深刻化する気候の影響下における地域社会のレジリエンス強化に向けた政府の取り組みについて言及しました。再生可能エネルギーの導入や、データ活用による高精度な施策の推進など、JICAの支援方針も説明されました。

若者の未来を見据えた提言



アフリカは「若者の大陸」として知られ、各参加者は若者の教育、雇用機会の創出、政治・経済・社会参加についての重要性を述べました。高雄キャスターは人間の安全保障のアプローチにより、多様な課題を解決し、若者や女性にとってより良い未来の構築に挑む必要性を訴えました。

終わりに



最後に、TICAD9を契機にアフリカにおける人間の安全保障の考え方が、具体的な行動につながることが期待されます。アフリカ諸国の主体性を尊重し、国際社会が連携して挑む「人間の安全保障」の理念が、未来における持続可能な発展に寄与することを祈念してやみません。


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