辻惟雄が解説する日本絵画の魅力
美術の深淵なる世界を探る著書『最後に、絵を語る。 奇想の美術史家の特別講義』が、8月5日に集英社より発売されます。この本では、著者である辻惟雄氏が日本の正統派美術を独自の視点から読み解き、その背後に潜む文化的な背景について詳しく語ります。
正統派と奇想の従属関係
辻氏は、江戸時代の「奇想の画家」たちの再評価を行った先駆者ですが、その一方で、「方向性が偏っている」との懸念を持つこともあるそうです。現在の美術ブームの中では、「若冲ブーム」が特に目立っていますが、著者はこの傾向を「ちょっと薬が効きすぎたか」と形容しています。今回の書籍では、そのバランスを取り戻すために、正統な絵画の系譜について言及しています。
本書の魅力は多岐にわたる
平安時代から近世初期まで
本書では、日本絵画の基礎的な流れである「やまと絵」と「狩野派」、さらには円山応挙について解説されています。「やまと絵」とは、平安時代に成立し、中国絵画の影響を受けながら独自に発展したスタイルです。一方、狩野派は室町時代以降に「和漢融合」のスタイルを確立し、約400年もの間、権力者からの支持を受け続けてきました。
円山応挙と奇想の画家たち
江戸時代中期の円山応挙は、その多彩な技法を駆使し、リアルな表現を生み出しました。辻氏は彼の弟子である長沢芦雪についても触れ、彼らの作品がどのように京都の近代画壇に影響を及ぼしたのかを考察しています。
明らかになる辻惟雄の愛
本書の中でも特筆すべきは、「私の好きな絵」という章です。この章では、著者が特に愛する作品について熱弁をふるいます。中でも、室町時代の絵入り本『かるかや』や、東山魁夷の作品に対する思いを深く掘り下げ、彼自身がどのように絵からインスピレーションを受けているかを解説しています。
100点を超える図版も魅力
本書には、著者が選定した100点以上の作品図版が収録されています。そのうち70点はカラーで紹介され、視覚的にも楽しめる内容となっています。辻氏の詳細な解説とともに、これらの作品を通して日本美術の奥深い魅力を再発見できるでしょう。
書籍情報
この新刊は、東京大学の名誉教授である辻惟雄氏の長年の研究成果が詰まった一冊です。特に、山下裕二氏との師弟対談は、著者の真意をより深く理解するための貴重なセクションとして位置づけられています。
近世の風景を感じさせる著作を手に取り、辻惟雄氏の美術史の世界に浸り、新しい視点を得てみてはいかがでしょうか。
著者の代表作として位置づけられるこの書籍は、美術ファンの書棚に欠かせない一冊となること必至です。是非、購入をご検討ください。