高齢者の骨折予防
2012-10-02 11:38:37

高齢者の骨折・転倒予防に向けた対策と新たな知見

高齢者の骨折・転倒予防に向けた対策と新たな知見



高齢者の骨折は健康寿命を脅かす大きな要因であり、日本においてもそのリスクは増加しています。公益社団法人日本整形外科学会が提唱する「骨と関節の日」では、運動器の健康に関する重要な情報が提供されています。

骨折の現状とリスク



骨折は日本の高齢者にとって重要な介護の原因の一つです。特に、大腿骨近位部の骨折は寝たきりのリスクを高め、健やかな生活を脅かします。近年、海外では骨折の発生数が減少している一方で、日本ではその数が増加し続けています。高齢者の骨折・転倒防止対策が急務です。

松下隆教授によると、上腕骨近位部、橈骨遠位端、椎体、大腿骨近位部といった部位が特に骨折しやすく、これらの骨折は日常生活や生命予後に深刻な影響を及ぼします。実際、大腿骨近位部を骨折した高齢者の50%は元の機能に戻ることができず、20%は1年以内に亡くなるというデータもあります。

ドミノ骨折のリスク



高齢者が一度骨折すると、次々と他の骨折が引き起こされるリスクが高まり、この現象は「ドミノ骨折」と呼ばれています。松下教授の研究では、脊椎圧迫骨折を経験した人が次に大腿骨近位部骨折を起こすリスクは通常の人の3〜5倍、片方の大腿骨近位部を骨折した人が反対側も骨折する確率は約4倍になります。このような「負の連鎖」を防ぐためには、初回の骨折後に速やかに骨粗鬆症への治療を始めることが必要です。しかし、実際には骨粗鬆症の治療が開始されるのは2割未満にとどまっています。これにより、治療の早期介入が重要であることが示されています。

調査結果と生活実態



さらに、松下教授が監修した調査では、40代以上の3,000人において、加齢に伴う骨折リスクを認識している人は9割以上いたものの、自身の骨密度を定期的に測定している人はわずか12.6%という低さが明らかになりました。約40%が骨強度の低下や転倒予防についての対策を講じていないことも浮き彫りとなり、中高年の多くが自身の骨の健康状態を把握できていない可能性が示されています。

具体的な予防策



日本整形外科学会では、骨折予防に向けた具体的な対策として「ロコモティブシンドローム」を提唱しています。これに関連する「ロコチェック」は、運動器の状態をセルフチェックできるテストとして多くの人々に推奨されています。また、定期的な骨密度検査とともに、「ロコトレ」や太極拳といったバランスや筋力を向上させる運動、危険箇所の点検・改善が効果的であるとされています。

高齢社会の影響とこれからの課題



日本は現在、65歳以上の人口が21%を超える超高齢社会に突入しています。これに伴い医療費や介護費の増大が懸念されています。また、厚生労働省のデータによれば、健康寿命と実際の寿命の間には男性で9.13年、女性で12.68年の差が存在します。この「不健康な期間」を短縮するためには、運動器の健康に対する再評価が必要です。

運動器の健康を重視し、骨折・転倒を予防することは、個々の健康寿命を延ばすだけでなく、社会全体の医療費削減にも繋がる重要な課題です。今後も、骨の健康に関する啓発と具体的な対策の普及が求められます。

会社情報

会社名
公益社団法人 日本整形外科学会
住所
東京都文京区本郷2丁目40番8号THビル
電話番号
03-3816-3671

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