北海道白糠町のチーズ製造が新たなステージへ
北海道の白糠町には、地域の特産品である美味しいチーズを作る工房があります。その名も「白糠酪恵舎」。この工房では、牛乳の鮮度と品質にこだわり、安心して食べられる美味しいチーズを提供することを使命としています。そしてこの度、白糠酪恵舎は新たな製造設備「チーズパット」を導入することを決定しました。この設備は2025年2月からの稼働を見込んでおり、生産能力の向上とともに、より安定した供給体制を構築するための重要な一歩です。
新設備で生産が1.3倍に
「チーズパット」の導入により、年間の乳処理量は約1.3倍に増加する見込みです。これにより、地元の酪農家への支援が強化され、事故や不況時にも安定して原料を供給できる体制が整います。新しい製造方法では、牛乳の温度を適切に管理することで、発酵から凝乳、カッティング、ホエー抜きなどの一連の工程を効率的に実施することができ、エネルギーコストの削減も期待されています。これにより、より高品質なチーズが市場に供給されることになるでしょう。
職人技が光るモッツァレラチーズ
白糠酪恵舎の人気商品、モッツァレラチーズの製造現場を訪れました。代表取締役の井ノ口和良さんと取締役事業部部長を務める及川由博さんにお話を伺いました。井ノ口さんは毎朝、生乳を直接牧場まで取りに行き、その工程から新鮮な牛乳がチーズ作りの鍵であることを強調します。
「生乳を運ぶときはできるだけ振動を抑え、酸素が入らないように注意する。乳酸菌を育てるためには、非常に丁寧に扱う」井ノ口さんの言葉には、生乳を最大限に生かすための強い使命感が感じられました。
モッツァレラの製造には「フィラトゥーラ」という特別な手法が採用され、凝乳のカードを温かいお湯で混ぜ合わせ、最適な状態に仕上げます。この作業は、まさに職人技。
牛との信頼関係を築く
白糠酪恵舎では、地元の酪農家との連携が不可欠です。その中でも「対木牧場」の對木隆司さんは、井ノ口さんの信頼できるパートナーとして長年にわたり協力を行っています。對木さんの牧場では、牛が自由に過ごせる環境を整備し、ストレスの少ない飼育環境を確保しています。
「牛には自分のペースで過ごさせ、健康な状態で育てることが、良い牛乳を得るための鍵です」と對木さんは語ります。このこだわりが、白糠酪恵舎の高品質なチーズを支えているのです。
地域を守り続ける信念
井ノ口さんは、「50年後もここでチーズが作られている絵を描く」ことを目指しています。先代から引き継いだこのビジョンは、今後の酪恵舎の発展にとって基盤となるでしょう。「生き物が相手だからこそ、自然のままを大切にしたい」と井ノ口さんは語り、とりわけ白糠町の豊かな自然とその資源を大切にする考えを持っています。
白糠酪恵舎のチーズ作りは、ただの製造業ではなく、その裏に地域の人々を幸福にしたいという強い思いが込められています。地域の恵みを最大限に活かしながら、今後も多くの人々に愛されるチーズを作り続けていくでしょう。
地域の誇りとして。美味しいチーズを
白糠町の酪恵舎は、これからも質の高いチーズを作ることで地域の活力を支え、消費者に豊かな味を提供していきます。彼らの真摯な姿勢と、失敗を恐れず未来を見据える視点は、多くの人々に感動を与えることでしょう。