新しい医療文書生成システムの実現へ
東京都板橋区に位置する「おうちにかえろう。病院」は、医療法人社団焔の運営する医療機関で、現在、医療文書を半自動で生成する先進的なシステムの実証実験を実施しています。本実験は、NTTプレシジョンメディシン株式会社と新医療リアルワールドデータ研究機構(PRiME-R)の共同プロジェクトの一環として行われており、期待が高まっています。
プロジェクトの背景と目的
この取り組みは、令和5年度の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として行われています。PRiME-Rは「症例報告・病歴要約支援システムの開発」を目的とし、医療文書の自動生成によって医療現場の負担を軽減することを目指しています。具体的には、退院サマリーなどの医療文書を自動的に生成することで、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指します。
誰がどのような役割を持っているのか
本研究には以下の3社が関与し、それぞれの強みを生かして進められています。
1. おうちにかえろう。病院
この病院では、医師や看護師、スタッフが実際に新システムを使用し、生成された文書の有用性評価を行います。臨床の現場で実際に使用することで、ニーズを把握し、システムの改善に役立てる役割を担います。
2. NTTプレシジョンメディシン株式会社
同社は「おうちにかえろう。病院」における電子カルテ「モバカルホスピタル」に新システムを実装し、検証の結果を基に機能改善に取り組みます。このシステムは、中小病院向けに設計されており、多くの医療機関への展開が期待されています。
3. PRiME-R
PRiME-Rは医療現場から得られたフィードバックを基に、システムのさらなる精度向上に努めます。特に、LLM(大規模言語モデル)を用いた技術を生かし、より正確な医療文書の生成を目指しています。
実証実験の成果と今後の展望
システムの主要機能である退院サマリー作成は、医師がモバカルホスピタルの画面上のAI要約ボタンを押すことで瞬時に生成されます。このプロセスにより、医師の日常の業務から文書作成の負担が軽減され、より多くの時間を患者ケアに充てることが可能になります。
今後は、200床未満の回復期や慢性期の病院、有床診療所など、実証実験に参加したい医療機関を募っていく方針です。
この取り組みは、医療従事者の負担を減少させ、医療の質向上に寄与するものであり、医療従事者の働き方改革ともつながる重要なステップです。医療現場へのAIの導入は、医療の未来を形成していく可能性を大いに秘めています。これからも医療分野におけるAIテクノロジーの進展と、その社会実装に期待が寄せられています。