AIを活用したオンデマンド交通の実証運行
よく知られているように、地方部の公共交通は多くの課題を抱えています。人口の減少や自家用車の普及は、特に地域の住民にとって交通手段の確保を難しくし、地方経済にも影響を与えています。そんな中、山梨県都留市で試験運行されたAIを活用したオンデマンド交通サービス「AIつる~と」が成功を収め、その結果が注目を集めています。これは、株式会社三菱総合研究所(MRI)と株式会社アイネスが共同で取り組んだプロジェクトであり、AI自動音声応答を活用することで、利用者の予約がスマートに行える仕組みが導入されました。
プロジェクトの背景
2023年2月17日から28日まで実施された「AIつる~と」は、地元の高齢者層に対する交通の利便性向上を目指したものです。昨年8月に締結された「デジタル社会の実現に向けた包括連携協定」を基に、アプリではなく電話を通じてAIによる予約を可能にすることで、より多くの高齢者が手軽に利用できるようにしました。多くの地方自治体が直面している公共交通の維持は、デジタル技術の導入によって解決できる可能性を示しています。
実証運行の詳細
前回の実証では、専用アプリによる予約方法が検討されましたが、「使い方が分からない」という声が寄せられました。そこで、AI音声応答による新たな方法が選ばれ、最大95%の予約がAIシステムで完了しました。利用者は自作のバーコード入り会員証を提示し、ドライバーがスマートフォンを使って読み取る仕組みでした。運行は無料で行われ、キャッシュレス決済の実証も同時に行われました。
利用者の反応
利用者からのフィードバックも非常に良好で、70%以上が「大変満足」または「満足」と回答しました。半数以上が「今後もAI自動音声予約を利用したい」とする声があがり、特に高齢者層からの支持が強く見られました。一方、音声認識の精度向上が求められるという新たな課題も浮き彫りになりました。
今後の展望
技術的な課題が残るものの、AI音声応答による電話受付は高齢者層の利便性向上に寄与する可能性が確認されました。今後は利便性を引き続き向上させるため、予約システムの改善や利用者層の拡大が検討されています。例えば、利用時間や運航の本数の充実、さらにマイナンバーカードの活用などが挙げられています。
地域活性化に向けたこうした取り組みが、今後さらに進展することを期待したいところです。MRIは公共事業の発展に貢献し、さまざまな自治体と協力しながら未来の交通インフラの姿を描いていくことでしょう。