近年の農業課題と活性酸素の可能性
農業において、連作障害や集中豪雨による土壌の劣化が悩ましい問題として取り上げられています。特に、良好な作物を育成するためには、土壌の健康が欠かせません。しかし、現状では土壌の殺菌・消毒に適した低コストの方法が見つかっていません。
そこで、滋賀県大津市に本拠を置くWEF技術開発株式会社が提案しているのが、活性酸素を用いた土壌の消毒技術です。この企業は、空気中の酸素を使って活性酸素を生成する特許技術を持っており、この技術を利用して菌やウイルスの除去を行います。最近の実験においては、短時間で土壌に活性酸素を供給することで、効果的な殺菌効果を確認できました。
土壌消毒の目的や方法
土壌を消毒する主な目的は、連作障害を回避することや病害の軽減、さらにはセンチュウによる被害を防ぐことです。一般的な消毒方法には、物理的、防御的、化学的な手法があります。しかし、現在主流の薬剤を使用する方法は、土壌生態系に影響を与える可能性があり、慎重な使用が求められます。
特に、ハウス栽培の場合、特定の作物が連作されることで特定の害虫や病原菌が増加しやすくなり、その結果、集中豪雨が頻発する今、土壌病害が益々深刻な問題になっています。
既存の問題点
現在の土壌消毒方法には多くの課題があります。化学薬品による影響や、熱水や蒸気を使用する方法には高額なコストや危険作業が伴うことが挙げられます。また、太陽熱消毒では、深さ20センチメートルまでしか効果が期待できず、それより深い部分の病原菌を無視することになりがちです。これらの問題を考えると、今のところ十分な解決策がないと言えます。
活性酸素による新しいアプローチ
WEF技術開発が行った実験では、活性酸素を生成する装置「AOS」を使って、塩ビ管を通じて土壌への注入を試みました。この装置は、コンプレッサーで空気を送ることで、土壌中に直接活性酸素を供給します。
実験の結果、活性酸素の供給によって50センチメートル先で82%、100センチメートル先でも52%の細菌が消滅したことが確認されました。これにより、土壌中でも強力な殺菌・消毒効果が得られることが証明されました。
殺菌メカニズムと利点
「AOS」が生成したスーパーオキシドは、水分と反応し、大量の活性酸素を生み出します。これにより、土壌中の細菌や微生物の細胞が瞬時に破壊されます。事実、AOSを用いることで、短時間で多くの活性酸素を供給できるため、土壌殺菌の機械化も容易です。
今後の展開
WEF技術開発は、この活性酸素生成装置をさらに発展させる計画です。最大3000L/minの活性酸素を生成できるため、土壌への効果的な殺菌アプローチを提供します。この装置を活用した新しい農業の形が期待されています。
会社概要
WEF技術開発株式会社は、2016年に設立され、農業分野における水処理や廃棄物リサイクルなど幅広い技術開発を行っています。今後も、新たなアイディアを持って日本の農業に貢献していくことでしょう。
URL:
WEF技術開発株式会社