花王が第57回日化協技術賞「環境技術賞」を受賞
花王株式会社は、持続可能な社会基盤の構築に寄与する新たなコンクリート表面美観向上技術を開発し、一般社団法人日本化学工業協会の第57回日化協技術賞「環境技術賞」を受賞しました。この賞は、化学技術の発展と経済社会への貢献が評価されるもので、その中でも「環境技術賞」は環境負荷の低減に寄与する優れた技術に与えられます。花王の受賞は今回で5回目となります。
受賞技術の背景と概要
コンクリート製品は、製造過程で気泡が含まれることがよくあります。この気泡が原因で完成品の表面に小さな陥没(気泡痕)が現れることがあり、美観が損なわれるだけでなく、コンクリートの劣化を早める要因となります。そのため、この補修作業が必要となり、実際には製造工程の約半分の作業負担を占めることが花王の調査から明らかになっています。
また、コンクリートの主要成分であるセメントを製造する際には、大量のCO2が排出されます。このため、最近ではセメント使用を抑えた環境配慮型コンクリートが注目されています。しかし、環境配慮型コンクリートは気泡痕が多く発生しやすく、普及に向けた課題となっています。
そんな中、花王は独自に開発した特殊界面活性剤を使い、コンクリート表面の界面を高度に制御することに成功しました。この技術により、通常のコンクリートだけでなく、気泡痕ができやすい環境配慮型コンクリートでも、製造時に添加するだけで補修作業が不要なレベルまで気泡痕を低減できることが確認されました。
本技術の主な特長
1.
美観向上と省力化: 特殊界面活性剤を応用し、コンクリート表面の気泡痕を減らし、表面補修の作業負担を軽減します。
2.
設備の対応: 既存の設備および運用条件でも使用可能です。
3.
環境配慮型への適用: 環境配慮型コンクリートにも対応した効果を発揮します。
結論と展望
花王はこれまで60年以上にわたりコンクリートに関する研究を重ねてきています。本技術は、生産性向上だけにとどまらず、環境配慮型コンクリートの普及促進にも寄与し、最終的には環境負荷を減少させることが期待されています。
この新技術は、コンクリート混和剤「マイテイ 21NS-X」に応用されており、今後、さらに広がりを見せる可能性があります。
花王の受賞歴
- - 第37回(2004年度): Pd/C触媒を用いたアルコールとカルボニル化合物からのクリーンなエーテル製造法の開発
- - 第41回(2008年度): 鋳造用湯道管『EGランナー』の開発
- - 第45回(2012年度): 超濃縮衣料用液体洗剤『アタックNeo』の開発
- - 第51回(2020年度): 超低温定着トナー『LUNATONE®』の開発
以上のように、花王は環境保全と経済活動の両立を目指し、これからも革新的な技術の開発に取り組んでいくことでしょう。