宿泊業界における特定技能制度の利用状況と課題

宿泊業界における特定技能制度の利用状況

株式会社ダイブと各協会との共同調査が行われた結果、宿泊施設における特定技能制度の活用状況と関連する課題が浮き彫りになった。約4,600の宿泊施設が対象となり、多くの施設が人手不足に悩んでいる現状が明らかとなった。40%以上の宿泊施設がすでに特定技能枠を利用しており、外国人労働者の受け入れが進んでいる。一方で、制度への理解不足や手続きの繁雑さが依然として大きな障壁となっている。

宿泊業の現状を知る上で重要なデータも得られた。調査によると、約80%の宿泊施設が人手不足を実感しており、その理由の大半は「人手不足への対応」として特定技能による外国人の採用を挙げている。特に、レストランサービスや接客係の職種でのニーズが高く、宿泊業の中でが最も求められている職種の一つとなっている。

日本における外国人材の受け入れは、観光業の発展と密接に関わっており、今後の観光需要の増加が期待される中で、この人手不足はクリティカルな問題である。JNTOのデータによると、2024年7月には過去最高の訪日外客数が見込まれており、宿泊業界ではより多くの外国人材が必要とされることが考えられる。

一方で、特定技能制度に対する疑念も根強い。調査では、採用後の外国人材に対する不安や手続きの複雑さが多くの宿泊施設にとっての課題であることが指摘された。特に、言語の壁や文化の違いから生じるトラブルは多くの施設で共通の問題として認識されており、日本語能力が重要視されている。日本語能力や言葉の通信がない場合、コミュニケーションが困難になり、業務に影響を及ぼす可能性がある。

調査に参加した宿泊施設の中で、外国人材を昨年採用したと回答したのは75.7%、その在留資格の多くは「技術・人文知識・国際業務」であることがわかる。特定技能で採用している施設も40%を超えており、徐々に制度の浸透が進んでいることが伺える。

外国人人材採用の目的には、「人手不足の解消」が最も多く、次に「多言語対応の強化」が続く。宿泊業界の将来的なグローバル展開への準備が着実に進んでいるといえる。しかし、依然として制度の改善が求められている点は否めず、特に法的手続きや、生活環境のサポートが充実していないことが外国人材の受け入れにおける障害となっている。

今後、特定技能制度の改善によって、宿泊業への外国人人材の受け入れが促進され、より効果的な人材確保が実現されることが期待される。業界全体での連携と支援体制の強化が必要であり、特に地方の宿泊施設には継続的なサポートが望まれる。この調査を契機として、宿泊業界が抱える問題解決のための一歩が踏み出されることに期待したい。