山の環境を視覚化する新たなプロジェクトが始動
日本の山岳環境の変化を明らかにするために、新たに立ち上げられたプロジェクトが注目を集めています。このプロジェクトは、公益社団法人日本山岳会を中心に、東邦大学の下野綾子准教授と東北大学大学院生命科学研究科の近藤倫生教授がリーダーを務める「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」(通称NP拠点事業)によって推進されています。
山岳環境の「見える化」とは?
NP拠点事業の主な目的は、過去に撮影された山岳の写真を集め、これらをデータベース化することによって山の環境変化を「見える化」することです。このプロジェクトのスタートは2025年4月に公開される予定で、登山者からの未公表の写真提供も呼びかけています。やがて、これにより日本の山岳環境の変遷を科学的に記録し、共有するデータベースが完成します。
環境変化を知るための貴重な記録
山岳は古くから多くの登山者に愛され、多様な風景が写真として記録されてきました。しかし、近年の気候変動や生物の相互作用は、特に高山・亜高山地域における生態系に深刻な影響を及ぼしています。特に、増加したニホンジカによる草木の食害は、高山植物の生態系を脅かしています。これらの変化を理解するためには、過去の写真が欠かせません。過去の記録との比較により、現在の植生の変化がどのように進行しているのかを検討できます。
科学的知見の不足を補う写真の重要性
日本の多くの山岳では、環境変化の判断に必要な科学的知見が不足しています。そこで、過去に撮影された写真という客観的な記録が役立つのです。このプロジェクトでは、1960年代からの歴史的な山岳写真を集め、これを基に環境変化をモニタリングしていく計画です。これにより、ネイチャーポジティブな思考と行動を社会へ広め、持続可能な生物多様性保全に寄与することを目指しています。
危機的な状況にある南アルプス
特に、南アルプスにおいては、ニホンジカの食害によって高山植物の植生変化が深刻な状況にあります。そのため、今年は南アルプスの写真データベースを積極的に拡充し、具体的な保全活動への活用を計画しています。これにより、山岳環境の保全活動へ具体的な指針を示すことができるでしょう。
この再構築されたデータベースは、今後広く一般市民にも使われることが期待されています。普段は見過ごしがちな山の美しさや、その背後に隠された環境問題について考えるきっかけを提供することでしょう。
私たちが大切にしたい自然を守るためには、登山者一人ひとりの意識が重要です。過去の写真を通じて、日本の山々を守り、未来へと引き継いでいくための活動が始まります。興味のある方はぜひ、公式サイトを訪れてみてください。
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