カスタマーサクセス導入における企業の認識と障壁についての分析
バーチャレクス・コンサルティング株式会社は、2025年版の「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、その結果をまとめました。本調査では、カスタマーサクセスに取り組んでいない企業の経営・管理層に焦点を当て、導入の必要性や障壁についての認識を探りました。
1. カスタマーサクセスの必要性を感じている企業
調査によると、現時点でカスタマーサクセスに取り組んでいない企業の経営層91名の中で、カスタマーサクセスの導入の必要性を感じていると答えたのは約半数にのぼります。特に、「既存顧客離脱の増加」や「顧客との持続的な関係構築」といった理由が上位に挙げられ、企業の成長戦略において既存顧客の維持が重要視されています。しかし、サブスクリプション型商材を扱っている企業は15.4%にとどまり、78.0%は取り扱っていないという状況です。このデータは、カスタマーサクセスの必要性が認識されていても、実際に行動に移さない企業が多いことを示唆しています。
さらに、必要性を感じる理由の多くは収益基盤に関わるものであり、顧客満足度向上が目的となっている可能性も考えられます。しかし、「非常に感じている」とする企業は少ないため、慎重な検討が必要とされています。
2. カスタマーサクセス導入を阻む要因
経営層がカスタマーサクセス導入に向けて感じる障壁についても調査を行いました。その結果、「人材・組織体制が不十分」という回答が39.6%で最も多く、専門知識を持つ人材の確保が急務であることがわかりました。また、「取り組みの始め方が不明」や「ツール導入にかかるコスト」が障害として指摘されており、具体的な実行課題が導入決定に影響を与えています。
さらに、社内での理解を得られないという意見も多く、経営層がカスタマーサクセスを導入することに対する理解を得るのは容易ではないという現実も浮き彫りになりました。
3. カスタマーサクセス必要性を感じていない企業
一方で、カスタマーサクセスの必要性を感じていないと考える経営層101名に対して、理由を尋ねたところ、最も多かったのは「特に理由が思い当たらない」というもので28.7%を占めていました。この反応は、カスタマーサクセスの具体的な影響を理解できていない企業が多いことも示しています。
また、経営層はカスタマーサクセス導入の効果を見極める材料や短期的な業績向上に繋がる施策が明確でないため、慎重な姿勢が強い傾向にもあります。
4. 実行に向けた戦略
カスタマーサクセスを推進するためには、まず短期間での成果を示す必要があります。経営者が求めるのは、抽象的な改善ではなく具体的な数字による効果です。たとえば、売上や契約継続率の改善を示すことで、導入に関わるハードルを下げることが期待できます。また、スモールスタートでの試運用が有効であり、一部の顧客における試験的な取り組みが成果を上げることが効果的です。
5. まとめ
カスタマーサクセスの価値を実証することで、経営層の理解を得ることが重要です。「なぜ今取り組むべきなのか」「どのようなリターンが期待できるのか」を具体的に伝えることが、企業における成功を導くキーとなるでしょう。カスタマーサクセス導入には課題も多いですが、適切なアプローチによって高い価値を見出せることが期待されます。