東急不動産と再生建築研究所、グッドデザイン賞受賞の取り組み
2025年度のグッドデザイン賞において、東急不動産株式会社と株式会社再生建築研究所が手がけた
「COERU渋谷イースト」と
「COERU渋谷道玄坂」の2物件が初めて受賞しました。本記事では、これらの建物が持つ新しい価値や受賞に至った背景を探ります。
COERUシリーズの特徴
COERUシリーズは、
「RE:PLAY NATURE」をテーマにした都市型コンパクトビルです。この取り組みは、環境への配慮(資材の再生)、多目的に活用できる空間(フレキシブル性)、そして再生をイメージさせるデザイン性(クリエイティビティ)という三つの要素を基盤としています。
日本では平均的な建物の寿命が約30年と短いものの、中には良好な状態を保ちながらもニーズに合わないものが数多く存在します。このような古い建物を再利用して新たな価値を生み出すのが「再生建築」なのです。COERUシリーズでは、 △増築によって新たなオフィス空間を作り上げた
渋谷イースト、△用途変更を行うことで多機能なビルへと生まれ変わった
渋谷道玄坂の二つの物件がその好例です。
COERU渋谷イーストの再生
COERU渋谷イーストは、1972年に共同住宅として建設され、2017年以降はリニューアルされていましたが、フロアに複数のスタートアップ企業が入っていました。再生にあたっては、バルコニーやスラブの軽量化を行い、未消化だった容積率を利用して鉄骨造の4層を増築しました。これにより広々としたオフィススペースが実現し、建物の味わいを保ちながらも新たな命が吹き込まれています。
また、旧耐震建築物であったため、一部耐震補強が施され、現行の耐震基準をクリアしつつ安心・安全なビルへと変貌を遂げています。1階は商業スペース、2階から5階はオフィスとして利用される複合ビルとなりました。
施設概要
- - 所在地:東京都渋谷区渋谷2-6-6
- - 延床面積:697.30㎡
- - 構造:RC+S造・地上6階
- - 竣工年:1972年(新築時)、2024年(再生時)
COERU渋谷道玄坂の再生
一方で、COERU渋谷道玄坂は、築38年の建物を再生したプロジェクトです。以前はカプセルホテルとして使われていたこの施設は、4階以上の部分をオフィスへと用途変更しました。既存のサウナなど特徴を残しつつ、外壁の一部解体により新しい開口を設け、荷重を軽くすることで上層階の採光と眺望を確保しました。
内装も最新の設備を導入し、新築に劣らない快適性を提供しています。1階から3階には飲食店や宿泊施設が共存し、街の活性化に寄与しています。
施設概要
- - 所在地:東京都渋谷区道玄坂1-19-14
- - 延床面積:954.01㎡
- - 構造:SRC造・地上10階/地下1階
- - 竣工年:1985年(新築時)、2024年(再生時)
受賞の意義と展望
これらのビルが受賞したことには、近年の建設費の高騰と人口減少による新築至上主義の揺らぎに対する挑戦が表れています。持続可能な不動産投資や運用のモデルを再構築しつつ、地域のニーズにも応えているのです。受賞コメントでは、技術力が高く、既存建築の耐震性向上やビジネス面での事業価値向上を実現する取り組みが高く評価されています。
結論
COERUシリーズの成功は、将来的な再生建築の可能性を示唆しています。地域に根ざしたビルの再生が、新しい価値を生むだけでなく、環境にも配慮した選択肢であることを示しています。コストやニーズに合わせた柔軟な設計は、今後の都市開発にも影響を与えることでしょう。