立命館大学との共同プロジェクトで完成した東屋の魅力
株式会社桑原組(本社:滋賀県高島市)が立命館大学の建築サークル「デザインファクトリー」と連携し、約1年半の期間をかけて完成させたのが、安曇川スポーツセンター内にある東屋です。このプロジェクトはただの建物の設計と施工ではなく、学生たちの学びの場を創ることを目的とした貴重な共同作業でした。
学生たちの想いから生まれた東屋
プロジェクトの始まりは、建築を学ぶ学生たちと一緒にものづくりをしたいという桑原組の願いに基づいています。立命館大学との連携が図られ、建築学部には約200名の学生が在籍する「デザインファクトリー」を通じて、コンペティションが実施されました。そこでは、実現可能性や予算、技術、維持管理についての現実的な議論が行われ、東屋が選ばれました。この場所は子どもから高齢者まで幅広い世代が交流できる場として設計されました。
桑原組は施工協力を行い、本格的な建築技術の導入も行いました。特に注目されるのは、伝統的な木造技法「継手・仕口」を用いた工法です。釘や金具を極力使わず、木材同士を組み合わせることで、より自然な形での建設を目指しました。
学生たちの貴重な現場体験
建築プロジェクトに関わる中で、約80名の学生が設計や施工に参加しました。現場では予想外のトラブルが頻発し、仮組みの段階では完璧だったものが、実際の施工時には木が反ってしまうなどの障害が生じました。そんな中で、学生たちは大工たちと協力しながら、リアルタイムで調整や修正を重ね、最終的に完成へと導きました。
ある学生は、仮組みがうまくいかない事例を通じて「自分の設計に責任を持つこと」「柔軟に対応する力」について学んだと述べています。また、技術面で大工たちの迅速な段取りに感銘を受けつつ、同時に建築に対する自分の考え方を深めていったと語ってくれました。
学びの場としての意義
学生たちは図面だけでは得られなかった学びを現場で体験しました。その中で感じたのは、建築は理想だけで進められるものではなく、実際の利用者にとって使いやすい空間を作るためには、どのような努力が必要かを考える重要性でした。また、協力して創り上げる過程が、ただの実習とは異なる充実感を生んだのです。
プロジェクトを振り返って
桑原組の副社長である桑原勇人氏は、このプロジェクトは単なる職場見学や短期体験ではなく、設計から施工までを一緒に体験することで、学生たちが建築の面白さと困難さを実感できたことが大きな成果であったとコメントしています。これから桑原組は、立命館大学とのパートナーシップを進めるだけでなく、他の大学とも連携して多様なプロジェクトを推進していく意向を示されています。
今後の展望
このような取り組みを通じて、地域に根ざしたものづくりを次世代の学生たちと共に育成していく姿勢は、身近なコミュニティの発展にも寄与するでしょう。今回のプロジェクトは、その一端を担うものであり、地域に根付く建築文化の形成へとつながることが期待されます。
完成した東屋は、学生たちの努力の結晶であり、今後も多くの人々に愛される空間となることでしょう。