日本の正月を彩る年賀状。この伝統的な挨拶の文化が、近年大きな変化を迎えています。特に企業においては、その風潮が顕著です。帝国データバンクの調査によると、すでに約50%の企業が年賀状を廃止、いわゆる『年賀状じまい』を行っています。2024年12月15日から始まる2025年分の年賀状送付においては、3社のうち1社が年賀状を送らないことが予測されています。
この背景には、コスト削減や業務効率化、そして環境への配慮など、いくつかの要因があります。2025年用の年賀はがきは、10月に引き上げられた郵便料金の影響で、従来の63円から85円に値上がりしました。このような経済的な側面に加え、新型コロナウイルスの影響で社会のコミュニケーション形態が変わったことも、一因となっています。
具体的な調査結果では、2024年1月分を最後に年賀状をやめることを決定した企業が6社に1社の割合で見られ、2025年からさらに年賀状を廃止する予定の企業も8%に達しました。一方で、『年賀状じまいはしない』と回答した企業は約26%で、少数派ではありますが、年賀状文化を大切に思う企業も存在しています。中には、親しい取引先との年賀状交換を続けている企業もあり、業界ごとのスタンスが分かれる結果となっています。
企業の多くは、年賀状が単なる社交辞令と化しつつあるとの意見を示しており、実務的なコミュニケーションを重んじる傾向が伺えます。年賀状を通じた挨拶の代わりに、メールやSNSでのメッセージ送付を選ぶ企業が増加しています。特に、COVID-19パンデミックを機に、対面でのコミュニケーションからデジタルへの移行が一層進展しています。
とはいえ、日本の伝統を重んじる意見も少なくありません。年賀状を通じて新年の挨拶を行うことに意味を見出している企業もあり、社内外の関係性を大切にしていることが窺えます。新年の挨拶は文化的な側面を有し、単なる形式的な行為ではない場合も多いのです。こうした背景を考慮すると、年賀状じまいの傾向が進む一方で、会社ごとの文化や価値観を反映した多様なコミュニケーションのあり方が今後求められることになりそうです。
今年の年賀状は、企業文化の変化を映し出す象徴的な一面を持つと言えるでしょう。新たな挨拶の方法が今後標準化されていく中、日本の年賀状文化はどのように進化していくのでしょうか。伝統と現代のコミュニケーションが交差する中、新しい形の挨拶が誕生する時代が幕を開けるかもしれません。