ビジネスと研究の最前線!フィールド実験の活用法を徹底解説
近年、ビジネスと研究の両面において、フィールド実験の重要性が高まっています。特にマーケティング分野では、A/Bテストなどと呼ばれるランダム化フィールド実験が日常的に活用され、その有効性が実証されています。
この度、研究情報誌『流通情報』2024年11月号では、このフィールド実験を特集。「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」と題し、5つの論文レポートが掲載されています。本記事では、その内容を詳しくご紹介します。
フィールド実験の有効性と注意点
論文レポート①では、早稲田大学商学学術院教授の守口剛氏が、マーケティングにおけるフィールド実験の有効性について解説。因果関係を厳密に解明し、現実世界のデータに基づいた実用的な結果を得られる点が強調されています。オンライン企業を中心に日常的に利用されているA/Bテストもフィールド実験の一種であり、その有用性が示されています。
一方、京都大学大学院農学研究科准教授の三谷羊平氏による論文レポート②では、経済学におけるフィールド実験の分類と、設計・実施・解釈における注意点が詳しく解説されています。内的妥当性(統制の程度)と外的妥当性(現実性の程度)の両面から、フィールド実験のタイプを分類し、研究の信頼性を高めるためのポイントが示されています。
課題と新たな可能性
論文レポート③では、慶應義塾大学経済学部教授の星野崇宏氏が、フィールド実験における「不遵守の問題」を取り上げています。クーポン配布などの施策では、対象者への無作為な割り当ては可能でも、実際に利用するかどうかは強制できません。この不遵守を考慮した因果効果の推定が、マーケティングにおいて非常に重要であることが指摘されています。
論文レポート④では、株式会社サイバーエージェントのデータサイエンティスト北川慶氏が、フィールド実験を用いた価格戦略について解説。スーパーマーケットにおける価格実験の事例を紹介し、再現性の高い価格決定を実現する方法が示されています。この手法が企業収益に与えるインパクトも分析されており、ビジネスにおける実用性の高さがわかります。
メタバース環境とリアル店舗の比較実験
最後に、論文レポート⑤では、(公財)流通経済研究所主任研究員三坂昇司氏が、リアル店舗とメタバース環境における商品視認性の比較実験を紹介。食品スーパーを対象とした実験から、メタバース実験の有用性や、特に適した商品・カテゴリーが示唆されています。メタバースという新たな技術を活用した実験が、ビジネスの未来を拓く可能性を示唆する興味深い内容です。
『流通情報』誌の概要
『流通情報』は、流通経済研究所が発行する会員向けの研究情報誌です。食品業界、小売業、卸売業、物流業など、幅広い分野の研究者や実務家に向けて、最新の研究成果や業界動向を提供しています。隔月刊で発行され、電子版の利用も可能です。
まとめ
『流通情報』2024年11月号の特集「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」は、フィールド実験の有効性、注意点、そして最新の研究事例を網羅した、非常に価値のある内容となっています。ビジネスパーソン、研究者にとって必読の一冊と言えるでしょう。