楽天が新たに開発した「Rakuten AI 3.0」とは
2023年10月、楽天グループ株式会社は「GENIACプロジェクト」の一環として、最新の高性能AIモデル「Rakuten AI 3.0」を発表しました。このモデルは日本語に特化した大規模言語モデルであり、約7,000億個のパラメータを有するMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを採用しています。このモデルの開発は、経済産業省およびNEDOの取り組みの一環として行われ、国内の生成AIの技術力強化を目指しています。
生成AI APIの新たなプラットフォーム
「Rakuten AI 3.0」は、楽天の「Rakuten AIゲートウェイ」という開発用プラットフォームに組み込まれ、従来の楽天サービスに順次統合される予定です。さらに、来春にはオープンモデルとして一般に公開される計画です。楽天独自の高品質なバイリンガルデータや技術力によって開発されたこのモデルは、日本の言語や文化、慣習を深く理解し、扱うことができる点が特長です。
コスト削減と効率性
このAIモデルは、性能と効率性の両方に優れています。その結果、楽天のサービスを支える試験において、他社の同規模モデルを使用した場合と比べて最大90%のコスト削減が実現されました。楽天グループのChief AI & Data Officerであるティン・ツァイ氏は、ユーザー体験の向上を目的としたコスト効率の高いモデルの開発を強調しています。
日本語特化の特徴
Rakuten AI 3.0は、日本語のモデルとして最高水準の性能を目指しており、会話能力や指導追従能力のファインチューニングが行われています。このモデルは、他の主なモデルとの比較においても、ペルソナの維持や説得力のあるブログ記事の作成といった機能が強化されており、具体的な評価データとして日本語版MT-Benchが使用されています。
確保されたデータの安全性
楽天はこのモデルの学習に際し、社内のマルチノードGPUクラスタを用いることで計算効率を高め、データの安全性も確保しています。つまり、データは外部に送信されることがなく、楽天のビジネスニーズに最適化された独自データを使用してファインチューニングされるため、正確な処理が可能となります。
今後の展望
経済産業省のAI産業戦略室長である渡辺琢也氏は、この新しいAIモデルが日本のAI産業をリードする鍵となることを期待しています。楽天は今後も独自のモデル開発を通じて、データとAI技術を活用した新たな価値創造を目指し、グローバルな競争に挑んでいく方針です。
「Rakuten AI 3.0」の導入は、今後の楽天サービスに革新をもたらし、ユーザーにとってより価値のあるAI体験を提供することに繋がるでしょう。AI技術の進化がもたらす未来への期待が高まる中、楽天の新たな挑戦から目が離せません。