使用済みケーブルのリサイクルに向けた新たな取り組み
2025年4月から、東北大学、東急株式会社、東急電鉄株式会社、そして三菱マテリアル株式会社の4者は、鉄道事業から発生する使用済みケーブルのリサイクルに関する研究開発を開始します。本プロジェクトは、環境再生保全機構による令和7年度の環境研究総合推進費に採択され、2028年までの約3年間にわたって実施される予定です。
現状の課題とは?
鉄道事業では、電気設備や信号設備に使われるケーブルが定期的に廃棄されていますが、これらのケーブルは特に強度に優れたものが求められます。しかし、そのため被覆材が細く、現行のリサイクル技術では銅線とそれ以外の素材を高純度で分別することが困難です。この結果、使用済みケーブルからリサイクル可能な資源が限られてしまっているのが現状です。
東急電鉄では、年間平均で約10トンの使用済みケーブルが発生しています。この貴重な資源を有効活用するための技術開発が強く求められていました。
湿式剥離法の新技術
本プロジェクトでは、廃棄ケーブルをモデルにした湿式剥離法を用いて、銅線と被覆材の分離を行います。この技術は、まず有機溶媒にケーブルを浸すことで被覆材を膨潤させ、その後、小さな金属玉で衝撃を与えることで、銅線と被覆材を効率よく分離します。この方法によって、それぞれの素材が高純度で回収されることが期待されています。
この湿式剥離法は、2つのプロセスを利用しています。1つは、膨潤処理の後に乾式ミルで剥離を行う2ステップ方式、もう1つは、濡れた状態で剥離を行う1ステップ方式です。これにより、銅線の高品質な再生が可能となります。
環境への影響と将来の展望
本技術を利用して再生された銅線や被覆材は、鉄道業界で使用される再生ケーブルとしてリサイクルされる予定です。さらに、リサイクルによるCO₂排出削減効果を定量化し、経済的な効果についても検証が行われる見込みです。これにより、鉄道業界だけでなく、他の業種にもリサイクルの波及効果をもたらすことが期待されます。
本研究開発においては、東北大学が主導し、三菱マテリアルのリサイクル技術が活用されます。さらに、脱炭素社会の実現を目指す東急株式会社と東急電鉄も連携して、環境問題に対する取り組みを強化しています。
今後この研究開発が成功することで、廃棄物を可能な限り減少させ、循環型社会の構築に貢献できることが期待されています。まさに、未来の鉄道業界とそのさらなる発展への第一歩となることでしょう。
参考情報
- - 東北大学: 1907年創立。世界水準の研究を目指し、社会問題の解決に寄与。
- - 東急株式会社: まちづくりを根幹とし、環境問題に取り組んでいる企業。
- - 東急電鉄株式会社: 鉄道事業の持続的成長を目指し、脱炭素社会の実現に寄与。
- - 三菱マテリアル株式会社: 循環型社会実現に向け、非鉄金属専門メーカー。