画期的なポスト5G通信を実現する半導体チップの開発
近年、通信技術は急速に進化していますが、その中でも特に注目されているのが、株式会社マグナ・ワイヤレス、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科、及び情報通信研究機構(NICT)の共同開発によるポスト5G半導体チップです。このチップは、世界で初めてとなる超低遅延通信を実現するもので、通信の遅延を従来の約10ミリ秒からわずか0.2ミリ秒以下に短縮することに成功しました。
開発の背景と目的
ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の一環として、NEDOが委託した本プロジェクトでは、産業用途における無線通信の遅延が数ミリ秒を超えないよう、高速大容量通信と超低遅延通信を両立させるチップの開発が目指されてきました。これまで、超低遅延が求められるシナリオでは適切な半導体チップが存在せず、ローカル5Gの普及が進まなかったのです。
ポスト5Gチップの特長
開発されたポスト5Gチップは、以下のような特長を有しています。
1.
超低遅延通信の実現
専用ロジック回路を使った無線信号処理により、従来の遅延時間を大幅に短縮しました。そのため、リアルタイムでの制御が求められる様々な応用に耐えられる性能を持っています。
2.
多様な通信設定に対応
ソフトウェア無線(SDR)機能を活用することで、通信の遅延や帯域幅の優先順位、無線変調方式に至るまで、様々な設定が可能となります。
3.
ネットワークスライシング機能の拡張
信号処理部とプロトコル処理部を分離し、SDRを活用して、複数のスライシングに対応します。この技術により、超低遅延通信と高速大容量通信の同時利用が可能となります。
4.
基礎インフラとの相互接続性
複数のベンダーの基地局との接続性が確認され、さまざまな無線システムでの適用が可能です。
未来への計画
ポスト5Gチップは、2025年度中に製品化が計画されています。この技術が普及することで、スマート工場や医療、物流の分野に革命をもたらし、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速すると期待されています。
例えば、低遅延の無線通信を活用したロボットのリアルタイム制御が実現すれば、工場の生産性は飛躍的に向上します。また、エッジコンピューティングの負荷を軽減し、AIを活用した様々なアプリケーションの実装も促進されるでしょう。
結論
このポスト5Gチップの開発は、今後の通信技術の方向性を大きく変える可能性を秘めています。通信の高速化、低遅延化により、私たちの生活やビジネスに新たな価値がもたらされる日も近いでしょう。加えて、NEDOが目指す憧れのポスト5G情報通信システムの確立は、日本における技術革新の更なる加速に繋がると考えられています。