土木学会DEI行動宣言の概要とその意義
公益社団法人土木学会は、2025年5月16日に「土木学会DEI行動宣言」を策定し、6月4日にその内容を公表しました。この行動宣言は、土木学会が抱えるダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)の考え方を踏まえ、具体的な行動指針を示すものです。
1. DEI行動宣言とは何か?
本宣言は、2015年に制定された「土木学会ダイバーシティ&インクルージョン行動宣言」の見直しの一環であり、新たにエクイティの概念を取り入れ、さまざまな背景の人々が土木に関与できる環境を提供することを目的としています。特に、女性や外国人、障害者といったマイノリティの声を反映させ、土木界の活性化を図ることが求められています。
2. 改訂の背景と経緯
近年、我々を取り巻く社会は急速に変化しています。人口減少や少子高齢化、福祉のニーズの高まりに加え、自然災害の頻発化といった課題が顕在化しています。これらの状況を背景に、土木学会は2015年のD&I行動宣言をもとに、より時代に合った行動指針を策定する必要性を感じていました。2024年度には「土木学会の風景を描くプロジェクト」を立ち上げ、DEI行動宣言の見直しへとつながったのです。
3. 行動宣言の3つの柱
土木学会DEI行動宣言は、土木学会及びその会員によるDEI推進のための三つの柱を定めています:
(1) 認め合う
すなわち、多様性を尊重し、異なる意見や視点を認め合うことが求められます。社会基盤整備に携わる技術者や専門家が、エンドユーザーの多様性を理解し、相互にリスペクトし合う環境を築くことが重要です。
(2) 発揮する
多様な人材がその能力を最大限に発揮できる社会を目指します。特にマイノリティの当事者が持つ創造性や問題解決能力を活かし、社会基盤整備に貢献していく方針です。
(3) 育つ
最後に、多様な人材や組織が自らの成長を遂げられるような取り組みを進めていくことが求められます。魅力のある土木界を作るためには、若手技術者や学生が関心を持つような環境づくりが必要です。
4. 各主体の役割
土木学会は、役員や各組織において本行動宣言の実施を積極的に進めることを求めています。また、会員一人一人もDEIの推進に貢献することが期待されています。さらに、DEI委員会は土木学会におけるDEI推進の中心として活躍し、土木界全体にもこの行動宣言を浸透させるよう努めていきます。
5. DEIへの道のり
土木学会は、2004年にジェンダー問題に関する特別小委員会を設立し、これまでに多くの進展を遂げてきました。2015年にはD&I行動宣言が発表され、近年では名実ともにDEIに向けた取り組みが充実してきています。今後も土木学会は、多様性を受け入れる体制を強化し、社会のニーズに応えていく所存です。
結論
このように、「土木学会DEI行動宣言」は、今後の土木界にとって重要な指針を示すものとなります。我々は、この宣言が広がりを見せ、多くの人々の理解と支持を受けることを願っています。