アレルギー疾患の克服へ新たな希望:ILC2分化メカニズム解明
千葉大学医学部附属病院の研究チームが、アレルギー疾患の発症・難治化に重要な役割を果たす2型自然リンパ球(ILC2)の分化メカニズムを解明しました。この研究成果は、ILC2を標的とした新たな治療法の開発に繋がる可能性があり、難治性アレルギー疾患の再燃防止や根治療法の実現に向けた期待が高まっています。
ILC2とは?
ILC2は、リンパ球の一種で、サイトカインや神経ペプチドなどの刺激によって大量の2型サイトカインを放出します。寄生虫感染やアレルギー疾患、恒常性の維持など、様々な役割を担っています。近年、ILC2はアレルギー疾患の発症や難治化に深く関与していることが明らかになってきました。
研究のポイント:ILC2分化を制御する鍵となるスーパーエンハンサー
今回の研究では、ILC2の分化に必須の転写因子GATA3のエンハンサー機能に注目しました。エンハンサーとは、標的遺伝子から離れた位置にあり、活性化することで遺伝子発現を促進する領域です。
研究チームは、ILC2特異的に機能する2つのスーパーエンハンサー領域(G3SE)を発見しました。スーパーエンハンサーとは、複数のエンハンサーが集簇した領域で、細胞種特異的な遺伝子発現に重要な役割を果たしています。G3SEを欠損したマウスでは、ILC2の分化が、これまで同定されていなかった成熟ILC2の一段階手前の段階で停止し、成熟ILC2が消失することが明らかになりました。
将来の展望:ILC2標的治療法の実現へ
本研究により、ILC2分化における後期ILC2前駆細胞の段階でG3SEによるGATA3発現誘導が必須であることが明らかになりました。今後、G3SEの活性化誘導機構の解明を進めることで、ILC2を標的とする新規治療法の開発が期待されます。
アレルギー疾患に悩む多くの人々への福音
ILC2の分化メカニズム解明は、アレルギー疾患の克服に向けた大きな一歩となります。研究チームは、この成果を基に、ILC2を制御する新たな治療法の開発を目指し、難治性アレルギー疾患に苦しむ多くの人々への福音となることを目指しています。