悪性リンパ腫治験におけるDCTプラットフォーム導入の意義と展望
悪性リンパ腫に関する企業主導の治験が、岡山大学病院にて開始されました。本治験は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社と株式会社MICINによるもので、岡山医療連携推進協議会の支援のもと、分散型臨床試験(DCT)を導入する初めての試みです。この取り組みは、患者の来院に依存せず、より多くの患者に治験への参加機会を提供することを目指しています。
近年、がん領域においては、治験の参加機会が限られた希少がんの患者に対する対応が求められています。悪性リンパ腫においても、この課題は深刻であり、特に再発または難治性のT細胞リンパ腫は、高い医療ニーズが残されています。今回の治験では、MICINが提供するDCTプラットフォーム「MiROHA」を利用することで、患者は自宅に居ながらにして治験参加の説明を受け、医療機関への訪問を必要としないプロセスが実現します。
岡山医療連携推進協議会のCMA治験ネットワークでは、DCTの導入を推進する動きが加速しており、2024年2月にはDCTの活用に向けた検討を開始します。その結果、同ネットワークに加盟する医療機関が増加し、合計10施設にまで拡大しました。これにより、患者一人一人に対する治験アクセスの向上が期待されています。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の社長であるスティーブ・スギノ氏は、「常に患者を中心に活動していくことが大切です。このDCT治験が、治験参加の機会がなかった患者にも新たな治療機会を提供できることを期待しています」と述べています。岡山大学病院も、地域での治験活性化の一環として、DCT技術を取り入れ、患者の負担軽減を図ることに意欲的です。
その一方で、MICINの社長である原聖吾氏は、「DCTを活用することで、治験のアクセス環境が改善され、患者と医療従事者の双方にとって有意義な治験環境を提供できると考えています」と強調しました。
また、岡山大学病院における治験推進部長の櫻井淳氏も、地域での治験活性化は重要であり、「デジタル技術を活用して、効率的に治験を実施することが可能になる」と述べています。
治験実施にあたり、CMA治験ネットワークは高い症例集積性を持つ強固なネットワークを形成しており、DCTを導入することで、より効率的な治験の推進が期待されています。日本には中規模の医療機関が多く、DCTはその解決策となる可能性があります。
悪性リンパ腫治験の一環であるBMS-986369は、再発または難治性のT細胞リンパ腫を対象としており、新しい治療薬の早期承認を目指しています。この治験が進むことで、患者さんにとっての治療機会が増え、より迅速な新薬開発が進むことが期待されています。
DCTプラットフォーム「MiROHA」は、オンライン診療機能やeConsent、eSourceの機能を備えており、全国の医療機関での利用が進んでいます。今後、この技術が他の疾病領域にも応用される可能性があり、治験参加のハードルが大幅に下がっていくことが期待されます。
このように、岡山大学病院とMICIN、ブリストル・マイヤーズ スクイブが連携した取り組みは、悪性リンパ腫患者に対する治験環境を大きく変える可能性を秘めています。今後も注目されるべき進展が期待されます。