ジュニア競泳選手のケガと成長段階
新潟医療福祉大学の三瀬貴生准教授らの研究グループは、成長期の競泳選手におけるケガや障害について新たな知見を発表しました。この研究は2021年から2025年にかけて、専門的に競泳に取り組む90名の選手を約4年間にわたり追跡調査したものです。主な調査目的は、外傷や障害の発生率や、その性別および身体的成熟度との関連性の解明です。
研究の背景
競泳は技術を必要とするスポーツであり、選手は幼少期から専門的に練習を積む傾向があります。しかし、成長期において競技に集中することで、身体には大きな負担がかかります。従来の研究は成人や大学生を対象としたものが多く、幼少期から競泳に取り組むジュニア選手に特化した調査はほとんど行われていませんでした。このような背景から、本研究はジュニア選手の特性に合わせた重要なデータを集めることを目的としました。
調査方法
本研究では、特定のスイミングクラブに所属し、外傷・障害の既往がない選手を対象にしました。選手たちは週5回以上、1回当たり90分以上の練習を行い、年間6回以上の競技大会に出場していました。調査期間中には、発症日、外傷の種類、部位などの詳細が記録され、外傷の発生率が算出されました。
主な結果
調査の結果、競泳選手の外傷・障害は主に111件が記録され、全体の発生率は1000アスリート・アワー(AH)あたり0.868となりました。特筆すべきは、女子選手の発生率が1.042と男子(0.643)の1.62倍であったことです。このことから、女子選手は男子に比べて外傷や障害の発生が多いことが示されました。また、身体の成熟度に関連して、外傷の発生部位にも違いが見られました。具体的には、成長スパートの前には足関節に多く、成長スパートの後には腰部に多くの外傷が生じました。
男女別のケガ発生率
また、女子選手の再発発生率は男子の3.67倍であることも興味深い点です。この結果から、女子選手は一度ケガをすると再発しやすい傾向があることが示唆されています。特に肩、腰部、足関節、膝といった部位において、女子は肩に主要な問題を抱える一方、男子は特定の部位に偏りなく分布していました。
研究の意義
この研究は、ジュニア競泳選手のケガ防止のために、性別や身体的成熟度に基づいたアプローチが必要であることを示しました。例えば、女子選手においては、成長スパート前には足関節のチェックが、成長スパート後には腰部の健康状態確認が特に重要です。本研究の知見は、ケガ予防に向けたトレーニングプログラムの設計に貢献すると期待されます。
今後の展望
ただし、本研究は単一クラブのデータに基づくものであり、さらなる多様な選手を対象とした研究が求められます。今後は、練習内容や選手の身体機能に関するデータを追加し、詳細な因果関係を探る必要があります。これにより、より効果的なケガ予防策が策定できると期待されています。
この研究成果は2026年に国際誌『Exercise, Sport, and Movement』に掲載され、ジュニア競泳選手における外傷・障害の理解を深める重要な一歩となりました。