なぜ人が集まっても地域問題が解決しないのか?
近年、日本の地方では、都市部の若者を呼び込む取り組みが活発化しています。「関係人口」や地域交流をテーマにしたプログラムが増え、学生を地域に招く動きが広がっています。しかし、若者が挑戦できる機会や地域の担い手不足といった問題は依然として解消されていません。このような二つの側面の不均衡は、なぜ解決できないのでしょうか?
この疑問に対する答えを、岩手県陸前高田市を拠点とする認定NPO法人SETは、社会の構造全体として捉えています。若者は地域と出会うチャンスが少なく、自分の能力を活かす場も見つけにくい状況にあります。一方、地域では担い手の不足が続き、新しい人材を迎え入れる余裕もありません。この二つのトレンドが同時に進行することが、挑戦する場が生まれにくい社会の土壌を作り出しているのではないかと、SETは考えています。
SETの取り組みと関係性の再設計
SETは、東日本大震災から約15年間にわたり陸前高田市で、若者と地域住民が出会う機会を創出してきました。これまで、20,000人以上の若者が地域での活動に関与し、民泊交流や地域プロジェクト、長期滞在を通じて持続的な関係性が築かれました。その結果、単発的なプログラムからではなく、むしろ人と人との関係性が挑戦の機会を生むことが明らかになってきました。
この新たな取り組みでは、若者、地域住民、行政、大学、企業といった多様な関係者間での「関係性」や「縁」を社会資源として再評価し、これらの関係性への介入を試みます。これにより、社会構造がどのように変化するのかを実証していきます。短期的には、陸前高田市を中心に、若者が地域に関わり挑戦できる新たな機会を創出することを目指しています。また、中長期的には現場での知見を整理し、「どの構造に、どのように介入すれば挑戦が生まれるか?」という問いに対する設計知を社会と共有することを狙っています。
第一期システムチェンジ応援ファンドへの採択
SETのこの取り組みは、一般社団法人Mindfulが運営する「第一期システムチェンジ応援ファンド」の実施団体として選ばれました。このファンドは、人口減少や社会分断、気候変動などの複雑な社会課題に対して、単発の解決策ではなく、根本的な社会構造の見直しに向けて支援を行うものです。応募した79団体の中から38団体が書類および面談審査を通過し、最終的に7団体が選定されました。
選ばれた団体は、子どもの安全や災害医療、難民支援、地域福祉など、各々異なる分野での構造的課題に取り組むことになります。これにより、社会の仕組みを実践的に更新する模索が進んでいきます。
人口減少時代に希望の光を見出す
人口減少の波は止められませんが、その中でも若者が挑戦し続けることができる社会は築けるのでしょうか?SETは、過去15年間の実践を活かし、この疑問に正面から向き合っています。今回の取り組みを通じて、人口減少時代でも地域が挑戦の舞台となり、人と人との関係性から新たな可能性が生み出される社会を模索していくのです。
認定NPO法人SETについて
SETは「一人ひとりの“やりたい”を“できた”に変える」というミッションを掲げ、2011年の東日本大震災以降、岩手県を中心に若者と住民が共に学び合う環境を整えてきました。修学旅行民泊や大学生・社会人向けのプログラムを通じて、若者と地域住民が共に学び合う持続的な関係を育んでいます。2024年度は年間5,000人以上の参加を見込んでいます。現在では岩手県のみならず、さまざまな地域へ活動を広げ続け、若者の成長と地域の活力を併せ持つ、持続可能な地域づくりを目指しています。