医療現場でのAI-OCR実証実験が示す新たな業務効率化の可能性

株式会社United Vision ＆ Company（以下、UV&C）と丸紅I-DIGIOグループは、医療現場における文書管理の効率化を図るべく、2024年12月から2025年2月までの約3ヶ月間、AI-OCR（光学文字認識）を用いた実証実験を行いました。この取り組みは、医療のデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進し、事務作業の負担を軽減することを目的としています。

医療現場の現状と課題

近年、日本の医療現場では「医師の働き方改革」が注目されています。多忙な医師の健康を守るため、長時間労働の改善が求められています。しかし、兵庫県の調査によると、医師の時間外労働は依然として高く、文書作成や会議などの事務作業が大きな負担となっています。専門的な診療に専念する環境を整えるためには、文書管理の効率化が急務です。

実証実験の内容

今回の実証実験では、医療現場で頻繁に取り扱われる多様な文書（健康診断個人票や診療情報提供書など）を対象としました。手書き文書にも対応するAI技術を使用し、これらの文書から情報を自動で抽出・分類する仕組みの構築を目指しました。

具体的には、最新のOCRエンジンを用いた文字認識処理と、自然言語処理を活用した情報の構造化の融合により、異なるフォーマットの文書に対しても高精度な情報抽出が可能かどうかを検証しました。実際に得られた結果は、手作業に依存するのではなく、効率的に医療情報をデータ化できることを示しました。

精度の向上と未来への展望

実証結果からは、特に「患者基本情報」や「病歴情報」の抽出において高い精度を達成できたことが確認されました。この成果により、医療文書の作成時間を大幅に削減する実用性が証明されています。また、文書作成日を基に患者の経過を整理する独自のアプローチも紹介され、患者情報の可視化の可能性についても光が当たりました。

実証成果の活用に向けて

UV&Cと丸紅I-DIGIOグループは、実証実験から得た成果をもとに、次のステップである要件定義フェーズに進んでいます。この取り組みは、医療現場でのさらなる実運用を見据えており、商用化を目指しているとのことです。

医療従事者にとって、情報処理の負担が軽減されることでより多くの時間を患者に費やすことができるようになります。今後、医療DXの進展は、医療の質を向上させ、患者中心の医療を実現する鍵となるでしょう。

企業の役割

- 株式会社United Vision ＆ Company は、医療業界における具体的な課題を明確化し、技術の実用性検証を担当します。現場での課題解決に向けた独自のアプローチが期待されています。
- 丸紅I-DIGIOグループ は、技術設計やプロジェクトマネジメントを支援し、実証実験全体を統括しています。特に、情報処理基盤の構築において優れたノウハウを活かし、技術の最適化に貢献しています。

このプロジェクトを通じて、医療のデジタル化が進むことにより、より良い医療環境の実現が期待されます。医療とITの融合が新たな挑戦を生む今、私たちの健康がより一層守られていく未来に向けて、大きな一歩を踏み出しています。