慶應イノベーション・イニシアティブが量子技術企業に追加出資
2023年10月、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)は、量子インターコネクト技術を開発するアメリカのスタートアップ、Nanofiber Quantum Technologies(NanoQT)に追加出資を行ったことを発表しました。この資金調達により、NanoQTは総額14百万ドルを確保し、スケーラブルな量子コンピューティングの基盤とされる技術開発を加速させることを目指します。
Nanofiber Quantum Technologiesの役割
NanoQTは、早稲田大学の青木隆朗教授が導入した超低損失ナノファイバー共振器QED(量子電気力学)を中心に、その技術を活用して中性原子方式の量子コンピュータ用のハードウェアを開発する企業です。世界中から集まった量子科学の専門家たちが集結しており、理論的な研究を実用技術に変える努力をしています。
これまでの量子コンピュータは独立したユニットによって構成されており、ビット数の制約に直面していました。具体的には、既存のシステムでは最大で10万ビットしか処理できず、実際には誤り耐性を持つための100万量子ビット以上を必要とする課題が存在していました。そこで、NanoQTはそのデメリットを解消するため、ナノファイバー共振器を活用し、複数の量子コンピュータユニットをインターコネクトすることで、広範なネットワークを形成し、圧倒的なビット数を実現する計画を進めています。
量子コンピュータの未来を見据えて
今回の出資により、人材補充も視野に入れながらNanoQTは研究開発をさらに推進します。特に、次世代の量子計算基盤を支える技術の開発に取り組むことが期待されています。このプロジェクトの一環として、日本国内でのポスト5G情報通信システム基盤の強化が進められています。これにより、国内外での量子コンピュータの産業化促進にもつながるでしょう。
慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)について
KIIは、2015年の設立以来、慶應義塾大学の研究成果を活用したスタートアップを支えることを目的としています。「その研究が、その発明が、そのイノベーションが、社会を変えるまで。」というミッションのもと、シード・アーリーステージの企業へのリード投資を行い、社会の課題解決への貢献を目指しています。また、2023年には初のインパクトファンド「KII3号インパクトファンド」を設立し、投資によるリターンだけでなく、社会的なインパクト創出も視野に入れています。
まとめ
慶應イノベーション・イニシアティブとNanofiber Quantum Technologiesの共同作業は、量子コンピュータ技術の進化において重要な役割を果たすことでしょう。今後の研究開発がどのように進むのか、大いに注目されます。