盛岡の歴史を探る展覧会「稲造以前のこと」が開催中

盛岡の歴史を探る展覧会「稲造以前のこと」

盛岡歴史文化館では、2025年11月17日まで「稲造以前のこと－盛岡藩士・新渡戸一族－」というテーマ展が開催されています。この展覧会は、盛岡市とカナダのビクトリア市が姉妹都市締結をしてから40周年を迎えるにあたって、新渡戸稲造に焦点を当てた貴重な機会です。新渡戸稲造は1862年に生まれ、教育者や農政学者として多大な功績を残した人物ですが、その活動の一端に盛岡藩士としての背景があることを展覧会は明らかにします。

新渡戸稲造は、カナダ・ビクトリア市でその生涯を閉じたことから、日加の文化交流の象徴ともなっているのです。彼は国際連盟事務局次長や、太平洋問題調査会理事長としても知られ、特に著書『武士道』は日本人の特性を外国に伝える重要な役割を果たしました。この本には日本の道徳や文化が武士の存在を通じて描かれるなど、新渡戸自身が武士の家系に生まれ育ったことも特筆すべきでしょう。

新渡戸家の歴史とその背景

新渡戸家には「新渡戸因幡家」「新渡戸西市家」「新渡戸伝家」など、7つの家系が存在しており、それぞれが盛岡藩士としての役割を担っていました。この展覧会では、江戸時代における家族の仕事も紹介され、稲造が生まれた家系である「伝家」の背後にある歴史を探ります。

盛岡藩士は「盛岡給人」と「在々給人」という2つのグループに分かれ、盛岡城を拠点に活動を行いました。新渡戸家はもともと花巻給人として出発し、分化しながらも盛岡藩に直接仕える道を選びます。特に「因幡家」は江戸時代初期から盛岡給人としての役を果たし、事実上の家の中での流れを作ってきました。逆に、稲造が生まれ育った「伝家」は時代の流れの中で盛岡給人に転換していく様子も興味深いものです。

展示資料の紹介

展覧会では、「盛岡藩家老連署証文」や「鹿角扈従日記」など、貴重な歴史的文書が展示されています。「盛岡藩家老連署証文」は1729年に作成されたもので、新渡戸常顕という新渡戸家の家老が署名したもの。これは盛岡藩の大井川手伝普請を支える役割を果たしました。

一方で「鹿角扈従日記」は1860年のもので、盛岡藩主・南部利剛の小姓が地域を巡検した際の日記です。ここには、青森県の開発中の三本木新田の情報が記されています。このように、新渡戸家の先代達がどのように盛岡藩を支えたのかを知る手掛かりにもなります。

また、「箱館表縮図」や「要門入学面付帳」なども展示されており、それぞれが新渡戸家の影響力や重要性を物語っています。新渡戸家は多くの兵学者を輩出した家系でもあり、家族が古くから続けてきた伝統を知ることもできます。この展覧会は、新渡戸家の歴史だけでなく、盛岡の歴史全体を学ぶ良い機会です。

まとめ

「稲造以前のこと－盛岡藩士・新渡戸一族－」は、盛岡と新渡戸家の重要な歴史を深く掘り下げる特別な展覧会です。興味のある方は、ぜひ足を運んでほしいと思います。新渡戸稲造がどのようにして盛岡藩士としての後ろ盾を得て、国際社会でいかに影響を及ぼしたのかを理解する絶好のチャンスです。もりおか歴史文化館でのこの貴重な経験をお楽しみください。