低分子化合物を活用した新しい間葉系幹細胞培地の開発
株式会社マイオリッジが住友化学と協力し、間葉系幹細胞(MSC)のための新たな培地組成を開発しました。このプロジェクトは、MSC培養における長期継代後の増殖能の低下や、幹細胞としての性質を安定的に維持することが難しい課題への取り組みを目的としています。
従来、MSCの培養には無血清やアニマルフリーの培地が使用されることが多く、これにはリコンビナントタンパク質が必要です。しかし、これらのタンパク質は高価であり、温度変化に対して脆弱で、低濃度では特に失活しやすいことが知られています。そのため、低分子化合物を使用し、培地中の増殖因子の使用量を軽減させることには、コスト効率と品質の安定性向上という2つの大きな利点があります。
マイオリッジは独自の培地成分データベースと探索技術を持ち、自社製品の開発だけでなく、再生医療や細胞加工物を手がける顧客への提案型の培地最適化サービスも行っています。また、住友化学は医薬品や農薬関連の研究開発で培った細胞培養技術を活用し、新しい再生医療の分野に挑戦しています。2022年からは、両社は資本業務提携を結び、この共同開発を進めてきました。
このプロジェクトでは、マイオリッジが持つ培地スクリーニング手法を駆使し、低分子化合物ライブラリーから有望な化合物を選定しました。その結果、MSCの培養に適した新たな化合物のミックスが発見されました。
低分子化合物の特性
低分子化合物の使用は、コスト削減だけでなく、製造元のロット間差が影響する品質のバラツキを軽減することにも寄与します。これにより、どのロットを使用しても均一な結果が得られることが期待されます。
まとめ
マイオリッジは、細胞培養の課題を解決し、細胞産業の発展に貢献することを目指しています。この新規培地の開発は、間葉系幹細胞研究において重要な一歩であり、今後の医療や再生医療の分野での応用が楽しみです。
「株式会社マイオリッジ」は、国立大学法人京都大学の研究成果をもとに設立されており、独自の培地開発に力を入れています。本プロジェクトは、細胞の特性を変える新たな手法の開発に繋がることが期待されています。ご興味のある方は、お気軽にご連絡ください。