ウッドデザイン賞2024:木と社会課題解決の革新的な取り組み
2024年、第10回目を迎えた「ウッドデザイン賞」の受賞作品が発表されました。今年は、366点もの応募作品の中から、社会課題の解決に貢献する革新的な31作品が上位賞として選出されました。最優秀賞には農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞の4作品が輝き、さらに大阪・関西万博特別賞(国際博覧会担当大臣賞)が3作品選出されています。
最優秀賞:多様な分野で光る木造建築と製品
今年の最優秀賞は、それぞれ異なる魅力を持つ4作品が受賞しました。
1. 農林水産大臣賞:「浦河フレンド森のようちえん」
北海道浦河町にあるこの幼稚園は、地域産の大径木をふんだんに使用した、子どもたちが自然の中で伸び伸びと遊べる空間が評価されました。木材の活用に加え、地域材の家具開発、地元事業者との連携など、地域社会との一体となった取り組みが注目されています。
2. 経済産業大臣賞:「自然へのホスピタリティーと森の中の工場」
栃木県那須塩原市にあるこの工場は、荒廃した森林の再生と、快適な職場環境の両立を目指した取り組みが評価されました。従業員の働きやすさだけでなく、地域住民への開放や地元雇用への貢献など、社会貢献度の高さも高く評価されています。工場で出る端材をバイオマス燃料として活用するなど、環境への配慮も徹底しています。
3. 国土交通大臣賞:「DLT恒久仮設木造住宅」
災害時の迅速な住宅供給を可能にする、接着剤を使わない革新的な木造住宅が受賞しました。規格材を用いたパネル化によって、短期間での建設と全国規模での木材調達を実現。恒久的な利用を前提とした設計は、木材による炭素固定にも貢献しています。
4. 環境大臣賞:「南阿蘇鉄道高森駅・交流施設」
熊本県南阿蘇村にある高森駅は、地元産のヒノキを使った伝統的な「修羅組み」技術を用いた、美しいデザインが評価されました。阿蘇くじゅう国立公園という景観に溶け込み、地域住民や観光客にも魅力的な空間を提供しています。中学生との協働による技術開発なども高く評価されています。
大阪・関西万博特別賞:伝統と未来を繋ぐ3作品
大阪・関西万博特別賞(国際博覧会担当大臣賞)は、次の3作品が受賞しました。
1. 「ARBOR」
福岡県大川市の木工技術と歴史を活かした、洗練された空間と多様な活動が評価されました。アーティスト、子ども、職人など、様々な人々の交流を促進し、木工職人の技術継承にも貢献しています。
2. 「霧島神宮駅前プロジェクト光来」
鹿児島県霧島市にある霧島神宮駅は、地域の製材業と神宮の森の景観を融合させた荘厳なデザインが評価されました。大径木の活用や高度な製材技術の展示など、観光客への訴求と地域産業の振興に貢献しています。
3. 「monacca」
20年以上にわたって販売されている木製品ブランド「monacca」は、洗練されたデザインと高い加工技術、サステナビリティへの取り組みが評価されました。間伐材の有効活用や売上の一部を森の育成基金に還元するなど、環境保全にも貢献しています。
受賞作品展示と表彰式
受賞作品は、12月4日~6日に東京ビッグサイトで開催される「エコプロ2024」で展示されます。12月4日には表彰式も予定されています。
まとめ
「ウッドデザイン賞2024」の受賞作品は、日本の伝統技術と最新の技術革新を融合し、社会課題の解決に貢献する、多様な取り組みを示しています。木という素材の可能性を再発見し、未来への展望を示す、貴重な機会となっています。